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[コメント] 蜜のあわれ(2016/日)

二階堂ふみの蓮っ葉な口跡が呪文のように魅惑的。『この国の私』で生と死の狭間に生じる「艶めかしさ」を発散させたように、今度は、そっち(虚)とこっち(実)の「あわい」の存在を浮かび上がらせる。「不確実さの確信」とでも言うか、確かに彼女は琉金に見えた。
ぽんしゅう

一方、真木ようこ演じる幽霊には「哀れ」や「儚さ」がなく(むしろ健康的!)で、彼岸から援護する芥川(高良健吾)の達観した凄味を借りても、あっち(霊界)とこっち(肉界)のあやうさがいまひとつ立ち上がらないのが難点か。

そのため、本来この話の面白さは、そっちと、あっちと、こっち、それぞれ別の時空の男女の交錯と、それを楽しむ孤独な老作家(大杉漣)のエロティシズムの残滓(人の業)がキモのはずが、金魚(二階堂)が孤軍奮闘するだけの「何だかよくわからない話」になってしまっている。

あと、小津映画の劇判みたいな飄々とした音楽が印象に残る。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)緑雨[*] けにろん[*] ゑぎ[*]

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