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[コメント] トイレのピエタ(2015/日)

この物語には「難病もの」にありがちな過剰さがいっさいない。身近に死がせまっときに、頭だけで物事を考えるという行為の無力さを作者が素直に受け入れているからだ。走り、泳ぎ、自転車を駆り、真衣(杉咲花)は死の誘惑に対して肉体を駆使して無意識に抗う。
ぽんしゅう

死に抗うにしろ、それを受け入れるにしろ、具体的に肉体が反応しなければその先へは進めないのだ。園田(野田洋次郎)にとって真衣が「浄化と昇天」の象徴となるのは説得力をもった必然に見えた。画を描くという行為は極めて直観的で、かつ能動的な儀式であり、そこに恣意や邪心が入り込む余地はないのだから。

ドキュメンタリー映画『ピュ〜ぴる』で強い印象を残した監督、松永大司にとって初の長編劇映画。今の日本映画界において、41歳での劇映画デビューは決して早いとは言えないが、今後もどんどん撮り続けて欲しい才能の出現がうれしい。

(評価:★4)

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