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[コメント] ふがいない僕は空を見た(2012/日)

「命の価値」といういささか気恥ずかしい話を、性交という最も無防備で現実的な自己確認行為が、虚構世界に逃げ込んだ滑稽なさまから語り始める真摯なズルさ。生まれたての赤子の可能性とは、異常性愛の苦悩や痴呆の果ての老醜へと繋がる可能性でもあるということ。
ぽんしゅう

たとえ「命の価値」そのものは等価であったとしても、生まれてきた全ての者に等しく幸福を与えたりはしないのだ。それでも「次へ」と進まざるを得ない者たち。それは、どこかの誰かなどではない、生まれてきた全ての者、つまり、あなたのことですよ、とタナダユキは言いたいのだろう。

あまり意味があるとは思えない卓巳(永山絢斗)と里美(田畑智子)のニ視点描写や、平行して描かれる良太(窪田正孝)と阿久津(小篠恵奈)のエピソード、さらにコンビニの先輩(三浦貴大)の顛末の座りの悪さといった構成上の欠点までが、この映画の味に思えてくる。

おそらく、『赤い文化住宅の初子』(07)や『百万円と苦虫女』(08)でもそうだったように、タナダが映画の最後に仕掛ける、さりげなさくも力強い「飛躍」の確信性の賜物だろう。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)サイモン64[*]

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