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[コメント] 裸体(1962/日)

脚本家成澤昌茂の数少ない監督作であり、妖艶な和服姿の印象が強い嵯峨三智子の、肌も露わな洋装が鮮烈な珍品。10代後半の娘を演じる嵯峨が当時27歳と知ってまた驚く。起承転結がはっきりしない一本調子の演出が蓮っ葉娘の暴走ぶりと被り作品の味となる。
ぽんしゅう

何故か、この時代公開の映画には、中年の愛人パパを翻弄する魅惑的な女たちを扱った傑作が多い。

例えば、母親の不貞を目撃し、男に対して自分なりの規律に基づくポップな奔放さでパパ(加藤武)に仕える『月曜日のユカ』(64)のユカ(加賀まりこ)。あるいは、プロとして自らの肉体を武器に、パパ(山村聡)たちの間を渡り歩き成り上がる『女は二度生まれる』(61)のしたたかな商売女、小えん(若尾文子)。

いわば、ユカ(加賀まりこ)は男との距離の取り方が分からない明るい性の迷い子だ。小えん(若尾文子)は男と女の関係を合理的に割り切ったプロフェッショナルな女。一方、本作の左喜子(嵯峨美智子)はユカや小えんと違い、ファッション、美容、食事といったモノに対する物欲を抑えきれない俗物女であり、性に対しても幼児的なまでに無防備な天然娘だ。

左喜子は、肉体それも性欲といった内面ではなく、グラマラス(豊満)という自分の外見に価値を見出し、気負いや懸命さもなく消費社会をフワフワと漂う、天然の反精神・非知性モンスターだ。中身が空っぽなだけに、この娘が一番打たれ強いに違いない。

(評価:★3)

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