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ぽんしゅうさんのコメント: 点数順

★3ぼくたちの家族(2013/日)弱冠30歳にして、前作に続き「ええ話」志向の職業監督に納まった石井裕也については、もう何も感想はない。生活難をさりげなく匂わせる左サイドが傷だらけの長塚京三の旧式セダンと、物語の転調を一身に引き受ける鶴見辰吾の存在感が印象に残った。[投票]
★3青春の門(1975/日)大正から昭和の敗戦へ至る裏産業史に、タエ(吉永)という「女」を軸に光が当てられる分、重蔵や竜五郎から信介へと受け継がれる「男」物語が薄れ、関根を経由して朝鮮戦争と日本国家という命題が抱える男根主義の苦悩が浮く。新人大竹しのぶの非凡ぶりは圧巻。[投票]
★3ミッドナイトクロス(1981/米)導入のレトリックから事件現場の集音までのサスペンスの緊張感と、女に対する軽薄さと音コレクターという偏執嗜好のトラボルタのキャラギャップに期待が高まるも、音の映画に徹しきれずベタな叙情に走るものだから、マニアの執念としてのオチに感動が生まれない。[投票]
★3スネーク・アイズ(1998/米)話は多少違えど演出パターンは20年前の『ミッドナイトクロス』そのもので、何を思ったのか毎回小出しにしていたデ・パルマの芸風が、ここにきて一気に炸裂する。大いなるマンネリズムVSニコラス・ケイジの「困った人」芸で奇しくもミレニアム記念碑となる。 [投票]
★3ファム・ファタール(2002/仏)レベッカ・ローミン・ステイモスの肢体が映画を支配する。その無節操なエロ芸は、「またかよぉ感」満載のデ・パルマの暢気で強引な空想劇と噛み合わせが悪い。とはいえ、その不協和音が味となって2時間まったく退屈させないのだから大したマンネリ芸である。[投票]
★3台湾アイデンティティ(2013/日)日本人になれなかった惜涙。あえて帰化しなかった自嘲。台湾や日本ではなく勲章をくれたインドネシアを永眠の地とする選択。彼らが口にする心情は複雑だが、それだけに、いまだ心中で絡まった思いの一端が垣間見えたに過ぎず、その先が知りたい欲求に駆られる。 [review][投票]
★3甘い鞭(2013/日)壇蜜姐さんは諏訪太郎竹中直人伊藤洋三郎の変態三人衆の存在感の前にかすみ、宝塚もどきの屋敷紘子の爬虫類のような身体のほうが奇妙にエロい。一方、パラレルに進行する間宮夕貴中野剛のパートは、感情描写の工夫がなく冗長。 [review][投票]
★3ハンナ・アーレント(2012/独=イスラエル=ルクセンブルク=仏)人知を超えた悪に遭遇したとき、人はその行為者をひたすら感情的に悪魔と罵倒するか、規範の及ばない狂人として区分することで平穏を保とうとする。「奴は特別」という常識という名の差別基準と、「自分だけは違う」という無根拠な自信こそが「悪の凡庸さ」の萌芽。 [review][投票]
★3パラダイス:希望(2013/オーストリア=仏=独)3部作を通して感じるのは、ヒロインにウルリヒ・ザイドゥルが哀れみではなく慈しみを持っていることだ。それは、この肥満少女(メラニー・レンツ)が、酔いつぶれたときに漂わせる「可憐さ」に特に良く現れている。この慈愛こそが「孤独女」3連作の救い。[投票]
★3父の秘密(2012/メキシコ=仏)カメラの視線に温度がなく、冷静というよりはむしろ冷徹に父と娘と出来事を捉え続ける。意味や感情の排除の先に観客が見せられるのは、封印された激情が到達する静かなる合理的狂気だ。我々は呪術に侵されたように、結末を無感情に受け入れるよう洗脳されている。 [review][投票]
★3遭難者(2009/仏)〈ろくでなし〉と呼ばれる男(ヴァンサン・マケーニュ)の意識せざる「仕業」は、恋人たちの関係性に生じていた当人たちすら自覚していない破綻の切れ目に忍び込み、傷口を世間に向けて露見させる。善意の承認欲求が生む齟齬の煩わしさは現代社会共通の気分。 [投票]
★3明りを灯す人(2010/キルギス=仏=独=伊=オランダ)ライトさんが思い描く明日と国が向かう先とのギャップ。文化の象徴である電気を扱いながらも、キルギスの格差が生む矛盾に埋没する個人の思い。圧倒的な空の青さのもと、オンボロ自転車や手作り風車が時代から取り残されつつある生活の「今」を象徴する。 [投票]
★3ニシノユキヒコの恋と冒険(2014/日)ニシノは「女がして欲しいと思っていること」が分かるという。それは彼の愛がなせるわざ。恋とは一時の欲望の発露で、自らの感情を妄信するトランス状態のこと。恋は愛を駆逐する。恋(れん)と愛(あい)の狭間を彷徨う男に比べて、女たちのなんと満足げなこと。[投票]
★3忠臣蔵(1958/日)壮大かつ豪華絢爛なセットと、きら星のスター陣に理屈は不要。長尺物語の要所を的確にまとめた脚本と、ツボを押さえた役者たちのケレンで心地よくお芝居をまとめる演出の妙がすべて。語るのではなく見せることで素材を活かすことに徹したオールスター映画の鏡。[投票]
★3怒りの荒野(1967/伊=独)底辺に封殺された何も持たざる青年が、人並みに認められるために手にした「力」は、人の秩序を破壊してしまうほどの暴力だったというアイロニー。マカロニウェスタン特有の明るさのながジュリアーノ・ジェンマの無邪気さが逆照射の光となって深い影を刻む。[投票]
★3ギターを持った渡り鳥(1959/日)ただの浮かれ者だと思っていたギター男の意外な経歴に意表をつかれる。宍戸錠の悪人面は気持ち悪いが、金子信雄のワルぶりは徹底していて心地よい。まん丸顔の浅丘は華がなくいまひとつ。シリーズのぶっ飛び感はまだない、至極まっとうな日活アクション。 [投票]
★3危険なプロット(2012/仏)中産階級一家の空疎な生活に「創作」を通して人間らしい苦悩を仕込み、一家をマイナス方向へ覚醒させるという、閉塞状況をかかえた労働者階級の青年の無意識の復讐が、生徒の凡庸を愚痴り、陳腐なアートに翻弄されるインテリ中産階級夫婦をも飲み込むという悲喜劇。[投票]
★3ミヨちゃんのためなら 全員集合!!(1969/日)いかりや長介加藤茶のドリフパートは前作の焼き直しパターンで魅力なし。なによりも喜劇としての華がなさ過ぎる。それに比べてハナ肇三井弘次倍賞美津子のノリの良いこと。三木のり平を加えた留置所の将棋シーンの破壊力はさすが。[投票]
★3ラリー・フリント(1996/米)法や制度から見放された環境で育った男(ウディ・ハレルソン)が信じるものは生理としての欲望だけだ。ラリーの挑発と暴走に手を焼く顧問弁護士(エドワード・ノートン)が唱える、理性的法廷戦術の結果得られる「表現の自由」などと次元が違うのだ。[投票]
★3ブラス!(1996/英=米)日本なら下町工場の湿っぽい貧乏涙話しか、わざとらしく明るい組合い団結話しになってしまいそうなところを、嫌なものには気づかないふりする能天気なブラバン馬鹿たちが「元気に聴かせてくれる」趣向が、逆に彼らへの共感を生むという高度なサッチャー批判映画。[投票]