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[コメント] M(1931/独)

M for… 
モモ★ラッチ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







Murderer.ペール・ギュントを口ずさみながら。

★映像

「犯人を見つけた方に賞金を!」の張り紙をしたポストにMの影が浮かび上がり、標的にされた少女の運命は転がるボールと行き場を失った風船のみで語られる。

「伝えたいこと」をどのようにして語るか。そこに考えをめぐらすことが、映像作家というものであろう。その能力をフリッツ・ラングは持っていた。

★音

M出現の合図となったペール・ギュントの一節が、無音の状態、少女を追いかけるカメラにかぶさるように鳴り出す。これだけで状況を説明するには十分なのだ。

★視点

事件に手を焼き一般市民から批判を受ける警察とその警察に目をつけられた地下の犯罪集団の視点から語られていく。

興味深いのは、犯人を追うのが警察だけでないところであり、その集団も、例えば正義感から発生した自警団の類ではなく、犯罪集団であるところだ。四面楚歌に陥った、それまで顔を見せなかったMに、具体的な存在の輪郭が浮かび上がる。そこではじめて、「苦悩する・うろたえる犯罪者」という新たな視点が追加される。

この視点追加は単調に陥りそうな話に起伏を与える。

最後の私的裁判は、技巧で押していたそれまでの展開からすると唐突過ぎて首を傾げざるを得ないが、逆に言うと、それだけに記憶に残るものとなった。

ピーター・ローレの怪演は言うまでもなく素晴らしい。

(評価:★5)

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