[コメント] 裏窓(1954/米)
ヒッチコックの映像作家としての上手さを最も端的に表した作品。役者も皆好演。ジェイムズ・スチュアートの眼の演技、グレイス・ケリーの美しさ、セルマ・リッターの飄々とした味。カメラ・ワークや小道具、編集の素晴らしさはいわずもがな。
この時代のサスペンス映画と最近(90年代以降)のサスペンス映画は根本的に違うのでしょう。大味で湯水のようにお金を使って一本の映画の中でいろいろな要素を贅沢に盛り込む最近のサスペンス系の映画には全くといっていいほど魅力を感じない。画面の隅から隅までどのシーンをとってもポスターにして飾りたいくらい愛着を感じているこの映画、いったい死ぬまでに何回観ることやら。My Best Movie!
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オープニングがシャレてます。カーテンが上がり、開け放たれた窓をカメラが出て行きますが、このときはまだ、カメラは好奇心を感じていない。暑さでけだるい感じです。
そのカメラが、ジェフそのものになります。好奇心に満ち満ちてくるのです。
この映画は、死角を作り上げることでサスペンスを生み出しています。
その死角とは、観客の与えられる情報が、ジェフの目撃したもののみから成り立つ、ということです。
ジェフは安楽椅子探偵として頭脳(想像力)を働かせ、リサとステラとドイルがその手足となって証拠を見つけていきます。
純粋なミステリと同じく、観客はジェフの見たソーウォルドの行動のみで推理してゆく。だから唐突に犯人側からの描写があってはならないのです。
ジェフの目撃しなかった唯一の行動も、そのあとでドイルがその情報をジェフに教えることで辻褄を合わせています。
この映画は、優れた、「登場人物と観客が一体となる」映画です。
それは、必ずしも、感情移入するということではありません。
ここで使われたセットは、箱庭としてそれだけでも完結している芸術品です。普通に眺めるだけでも楽しいでしょう。
しかしグレイス・ケリーの美しいこと!ホント、好きな女優を美しくとることにかけては天下一品ですネ、ヒッチコックは。
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