コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 飛べ!フェニックス(1965/米)

プライドをぶつけ合う三人の男たちの物語を核に、心情を全く解しない上司を持った部下の悲哀に満ちたお話を盛り込みつつ、だだっ広い広大な密室の砂漠を舞台に、アルドリッチらしい乾いたドラマが展開。
モモ★ラッチ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







必要は発明の母。その一心で、心はひとつにならなくとも、ひとつことに懸命になって打ち込む男たち。

フランク(ジェームズ・スチュアート)とハインリッヒ(ハーディ・クリューガー)、(大まかに分けると)経験と知識、体育会系と文系の二人がプライドでぶつかる一方で、その輪に入れないハリス大尉(ピーター・フィンチ)は、自らのプライドを証明するかのごとく、危険を顧みず危険の中に飛び込み、殺される。この三者三様によるガチなプライドのぶつかり合いはさすがオルドリッチらしい。

そんな、プライドとプライドの間であくまで冷静に状況判断をし、出来ることだけはする凡人(リチャード・アッテンボロー)がいい緩衝材になっている。こんな人物がいないと、プロペラも地球も回らない。

凡人といえば、フランクがワトスン軍曹(ロナルド・フレイザー)を殴るシーンで少しフランクが嫌な奴に見えた。一回目は小学生のように仮病を使ったワケだけれど、二回目は堂々と反抗した。軍人としてはアレなんだろうけれど、素の凡人として、ただ生き延びたいという素直な気持ちを否定するかのようなフランクの行動が嫌な奴に見えた。自分もハリス大尉のような行動は取れないだろうと思ったから。

最後は、日本語のタイトルの如く「飛べ!フェニックス」と手に汗握った。簡単につけられそうなタイトルだけれど、登場人物と観客、双方の気持ちを代弁するようなうまいつけ方だなと思った。

乾いたタッチで陰惨さは皆無、アクションもないのに画面から伝わってくる緊迫感は比類がない。この手の映画の代表としてもっと有名になってもいいと思う。

ジェームズ・スチュアートリチャード・アッテンボローハーディ・クリューガーピーター・フィンチジョージ・ケネディアーネスト・ボーグナインロナルド・フレイザー。華はないが豪華で濃いこの面子の中にジェームズ・コバーンがいないのが不思議だった、なんとなく。

オルドリッチはまだ5本目だが、ますますのめり込みそう。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)uyo[*] いくけん

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。