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[コメント] オリエント急行殺人事件(1974/英)

ポワロって、こんな人だったっけ?
Shrewd Fellow

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







原作を知らない人にもわかりやすい導入部はとても親切で、この導入部がオリエント急行とどうつながるのだろう?と観ている人たちにうまいこと予備知識を与えているのはよかったと思う。

この導入部のおかげで、現場に残された脅迫状の燃えカスからラチェットが本当は何者で、どうして殺されることになったかを、ポワロが瞬時に理解するというところまでは、なんとか目をつぶるとしても、そのあとが・・ポワロって、こんな人だったっけ?

12人全員がアームストロング事件に関わりがあった人々である、という証明が弱すぎるような気がする。これじゃ、ポワロは超能力者みたい。観察することで推理するホームズとは違い、ポワロは人々との対話から推理する人だったような印象だったのに、ひとりずつの面談で、一体何を聞き出したんだか。それで、どうしてアームストロング家にいた人だって、その家政婦とつきあってたカレシだって、運転手だって、夫人の妹だって、わかったの?証明できたの?と、観ながら何度もとまどってしまった。その上、ひどく高圧的な話し方で、やたらに偉そうだ。気に入らない(笑) 誇り高いベルギー人であることと、偉そうにすることは、まったく違うことのように思うんだけど。

しかも、しかも、だ。あのラストはどうだろう?どんな極悪人でも殺していいってことはないと思うのに、みんな祝杯なんかあげちゃって。妙に晴れ晴れとした顔しちゃって。これでいいのか?外国の映画によく登場する「正義を行う」というのは、どういうことなのだろう?「正義を行う」という名のもとに、みんなそれぞれ事件以降かかえている悲しみや苦しみや鬱状態から逃れたいだけじゃん。自分が楽になりたかっただけなのでは?と、あの晴れ晴れとした顔を見てたら思ってしまった。本当に「正義を行った」と思っているのであれば、自首して、世間にちゃんと言えばいい。うまくやりおおせたとドヤ顔でいるなんて、どうなんだろう? そしてまた、ポワロがこの第2の結末を選んだ背景には、どんなことがあるんだろう?原作には、そのあたりのことも書いてあるんだろうか?ポワロは警察官でなく、探偵なんだし、謎さえ解ければいいのかもしれないけど、真実を明らかにすることでしか人は救われない、復讐はさらなる憎しみや苦しみを生むだけなような気がするんだけどなぁ。Justiceという言葉には、どんな社会的背景が含まれているんだろう?と、改めて考えさせられた映画でした。

(評価:★2)

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