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[コメント] チェンジリング(2008/米)

こんな残酷な話はない。
Shrewd Fellow

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







警官による暴力や賄賂なら、日本でも必殺シリーズから「相棒」までずっと続いてきたわけで、確かにヒドイ話ではあるけど、目新しいわけじゃない。それにしても、別の子供をつれてきて、「あんたの子供だよ、よかったね。」といわれてもね〜、到底納得できるものではない。母親には双子だってどっちがどっちかわかるもんなんだ。それなのに、学校や周囲の人に聞けばずぐにわかるような嘘をなぜ警察はついたんだろう。警察の威信を守るため?方向性まちがってませんか?当時はきっと、反対の証言なんかしたらすぐに投獄されるか、精神病院行きになってしまって、なかなかちゃんとした証人になってくれる人がいなかったのだろうか。映画の中では、学校の先生や歯医者の先生が別人であることを証明する文書を出してくれるような口ぶりだったが、果たして実際に警察から圧力がかかったたらどうしただろうか?

ロス・アンジェルスにもこんなヒドイ時代があったんだ・・・というアメリカの過去をちゃんと記録しようとした映画なのか、それとも「実はアメリカ社会は裏ではこうなんだよ」というヒソヒソ話なのか、私はそこのところがかなりつかみにくかった。必死にウォルターを探す母親の物語と、警察の横暴さを描く物語が平行して描かれていて、私はこういう場合、「警察の横暴さ」のほうに意識が行ってしまって、同じ母親として主人公の彼女に感情移入できなかった。

「約束を守って映画に行けばよかった。ウォルターを優先するべきだった。」と一生、まさに一生後悔し続ける女性の映画としてみれば、これほどに残酷な話はない。自分のせいで息子が死んだと自分を責め続けて生きるのは大変な不幸だ。彼女には、そこから逃れたい!という気持ちがなかったか?子供を思う気持ち、ただそれだけなんだろうか。科学的にはウォルターの死は証明されていないし、自供も得られていない。「希望よ」とこたえた彼女のほほえみ。ウォルターを探し続けることで激しい後悔の気持ちを納得させようとしてないか?自尊心のため探してないか?難しいことかもしれないけれど、新しい人生を生きてほしかった。ウォルターのことを忘れなくても、自分の人生を生きることはできる。自分の未来へ向かって生きてほしかった。ラストの一文にそんなことを思い、到底美談には思えないんだけど、と感じた私は冷たい人間なんだろうか。なんて、ちょっとブルーなキモチになったりした。

1928年の電話交換の仕事ってのはきっと最先端の仕事だったんだろうけど、本当に手動で交換していたんだ・・・・ローラースケートはいて。主人公はバリバリのキャリアウーマンで、シングルマザー。妊娠した自分から逃げた相手について子供に、「ある朝届いた“責任”という小箱が怖くて逃げちゃった」と話すとは、アメリカ人ってスゴイと思った。そういう表現って日本語にはないし、たとえそれが本当でも日本では子供に事実を話す母親は少ないと思う。子供が自分をお荷物に感じずに本当のことをちゃんと伝える・・・日本じゃなかなかできない芸当だ。それにしても、80年以上前にシングルマザーで子供を育て、あんなに大きな家に住めるとは、車も新しくできない日本の出戻りとしては冒頭からかなり驚いてしまったわけです。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)yasuyon おーい粗茶[*] The★黒 けにろん[*] ぽんしゅう[*]

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