[コメント] 斬る(1962/日)
陰惨な話とは裏腹に、溜息が出るほど美しい映像。そのギャップが気色悪いほど心をかき乱す。三隅研次のこだわりが凝縮された71分。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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全てのシーンが観客の絵心に訴える名画の数々。鬼才三隅研次の様式美の賜物。もはや時代劇というジャンルを超えている。
板戸を背景に藤村志保の横顔アップが映し出される冒頭の映像(画コンテを描いたのは内藤昭らしい)からして、三隅研次の「陰翳の美学」が狂い咲き。実父天知茂と雷蔵の対面シーンにおいて、互いに向かって近づく2人の背後から背後へと、建築物を挟んで遠巻きに移動するカメラワークの浮遊感はどうだい!
緻密に計算された隙のない映像構成は、最後の最後まで保たれる。いつのまにか誰もいなくなり、もぬけの空となった屋敷を彷徨う雷蔵。主人公を自殺(切腹)へと否応なく追い込む虚無感と絶望感!!真上から冷たく見下ろすカメラワークが怖いほど効果的。
時折挿入される実父による実母の斬首シーン。水で清められ母に振り下ろされた妖しい白刃は、時空を越えて呪われた息子・信吾(雷蔵)をも斬るのだった・・・。
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