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[コメント] 模倣犯(2002/日)

才人森田、走って走って走りまくり、その後に誰も付いてこず。
ゆーこ and One thing

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 上下巻・2段組1400ページの超長編を2時間にまとめてあるため、原作を読まないと意味不明な部分が多数出現します。しかし、そこは許します。

 この作品の問題点は、森田が観客を置き去りにして、とにかく1人で、すごい勢いで突っ走っていることです。F1がレーシングコースを飛び出して公道を逆走するくらいの勢いです。

 一番わけが分からないのがピース(中居正広)の爆死シーンです。原作とは全く逆の結果だし、失笑もののしょぼいCGはともかくとして、彼が爆死を選ぶ理由を納得行くようにちゃんと教えてください。孫を殺害された有馬さんの心情を聞いてピースの良心が疼いたというなら、もうちょっとその辺を丁寧に描いてほしいです。

 というか、これほど人間の心理描写が取っ払われた作品も珍しいです。ピースと浩美(津田寛治)を残虐な犯行に駆り立てた理由はごっそり抜け落ち。

 有馬さんと真一が泣きながら邂逅するシーンも、原作では2人は「罪悪感を持ってしまった被害者」という強い絆で結ばれているから説得力が出てくるのに、それを全然描かないで観客を感動させようとしても絶対に無理!

 ラストの唐突な赤ちゃん登場も、今までは悪意一辺倒で演出しておきながら、全く正反対で純粋なものを何の前振りもなく登場させて「ホラッ、人類の希望である無垢で汚れのない赤ちゃんが出てきたから、今までのことは全部チャラにして涙と感動の終了になりました〜♪」と手前勝手に幕を閉じられてもなあ・・・。

 「模倣犯」に隠された44の謎・・・。この作品において、そんなもの知ってどうするんだ? 何の得になる?

 逆に「オリジナリティーに溢れていてここはさすがにうまい!」と思ったのは、ジャーナリストである前畑滋子(木村佳乃)の旦那(寺脇康文)を血祭りに上げた部分です。普段は「あなたの気持ちはよく分かりますよ・・・」というような姿勢で被害者に取材するくせに、その実何も分かっていないマスコミの人間に強烈な鉄槌を喰らわせる演出は感心しました。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)おーい粗茶[*] HW[*] けにろん[*] 茅ヶ崎まゆ子[*]

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