オリジナル版は次々に立ちはだかる難関を、知力体力を総動員して突破するパズルアクション。

　対するリメイク版は雪姫（長澤まさみ）の人間的成長を中心に据えた人間ドラマ。

　という体裁になっています。

　敢えてオリジナル版と同じタイプの作品を造らなかった樋口監督のチャレンジ精神を評価したいです。リメイク版はオリジナル版と同じものを製作しなければいけないという規則はどこにもありませんしね。

　しかし監督が描こうとした「人間ドラマ」は完成の域に達していません。前作の『日本沈没』を観て思ったことですが、樋口監督は人間同士の濃厚な絡みを描くのが得意ではありません。どうも一番向いていないジャンルにアレンジしちゃったみたいです。

　雪姫が市井の民草と接することで憤りや悲しみを感じ、人間として成長するきっかけ（侍の傲慢さ、虐げられる民衆、物のように売買される少女）はちゃんと用意されています。しかし、そういうことを経験したはずなのに、雪姫が人間的に一回り成長したようには感じられません（長澤まさみの演技が下手なのかもしれませんけど…）。

　武蔵（松本潤）との色恋話も、彼女の成長に一役買っているようには見えません。描き方がぎこちなくて話のテンポを殺しています。

　こう言うと身も蓋もありませんが、樋口監督の素養からすれば、いっそのこと人間の感情の機微なんて部分に全く触れない、脳天気スーパーアクション大作でも狙った方が良かった気がします。