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[コメント] バットマン ビギンズ(2005/米)

アメコミヒーローに単なる「ヒーロー」以上のアイデンティティを与えた、という一事においてはサム・ライミ監督の『スパイダーマン』に軍配をあげたい。
kazya-f

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ヒーローが、単なる「ヒーロー」なだけでは「リアリティ」(?)に欠けてしまう昨今。なぜ彼が強いのか、彼はいかにして誕生したのか、これを描くことで彼はより僕らのイメージの中に鮮明に、生々しく、肉感をもって息づいてくる。

サム・ライミ監督の『スパイダーマン』シリーズも同じような「ヒーロードラマモノ」であるのだが、個人的な意見を言わせてもらえば『スパイダーマン』シリーズのほうがおもしろいと思う。

いや、比べるようなもんじゃないことはわかっているけれども、このノーランバットマン』がいかに「ヒーロー」の葛藤とか、トラウマとか、ヒロインとうまくいかない、とか描いて見せたところで、結局彼は自己に克つし、トラウマは利用するし、ヒロインには「いや、実はオレ、バットマンなんだよね」と簡単にばらしちゃう(もっと観客を悶々ともだえさせろよ!←変態)しで、全くカタルシスを感じさせてくれない。

もう彼は乗り越えちゃったわけで、すでに無敵の強さを誇っているので、負けるんじゃないかな、とか露ほども感じさせず、安心感をもって観てしまえるのだ。これって結局昔からの「ヒーローモノ」とあんまし変わんないんじゃないかなー、なんて思ってしまうのである。安心感をもってみる終盤のアクションのなんと面白みに欠けることか。

翻って我らが『スパイダーマン』は全然乗り越えていない。未熟である。「ヒーロー」としての自覚もときどき見失う。全くもって弱い。弱すぎる。だからこそ応援できる。

バットマンにももう一歩突っ込んで欲しかった。ドラマにしてしまうなら、もっと僕らに近づいて欲しかった。歩み寄って欲しかった。結局のところ高嶺の花のままだったバットマンを、僕はショウウィンドウの外側から眺めることしかできなかった。

とはいえ、クリストファー・ノーランはいい監督だと思うし、クリスチャン・ベールは好きな役者だ。もちろん次回作もみるよ。

(評価:★3)

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