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[コメント] 新・座頭市物語(1963/日)

脚本は良く練られているし市を追うやくざを演じた須賀不二男が実にいい味を出している。白靄掛かった竹薮シーンの美しさも印象的。璧に瑕といえば大根女優坪内ミキ子演じる弥生と市とのロマンスに納得性が欠けるところ。→真相判明
町田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この弥生という役、初稿では足に障害を持っているという設定であったらしい。脚本家犬塚稔が三作目にして狙ったのはつまり、「障害者同士の恋、その最大の障害=障壁は、彼らの内なる盲目でも内反足でもなく、彼らを外側から縛り付ける身分・立場・常識といった社会的要素であった」という実に有意義なテーマであったのだ。

とこらがここに現実の”障壁”が立ちふさがる。

製作者サイド、疑いもなく永田ラッパ雅一大映社長である、が、「売り出し中の新人女優(=坪内ミキ子)が出鼻から足が悪い、という設定では見てくれも良くないし、第一、験が悪い」、というような主旨のイチャモンを付けてきたのだ。犬塚、田中徳三ともに最初はこれに反抗したが、悪名高いワンマン社長永田の指令に背けるはずも無く、結局、設定は変更されてしまったという。

こうして市と弥生、二人を強く結びつける要因は取り払われ、武家とあんま、身分の格差という障壁だけが取り残されることになり、二人のロマンスは唐突で合点のいかぬシロモノへとカタチを変貌させてしまったのである。

(評価:★4)

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