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[コメント] スパイダーマン(2002/米)

プロテイン&プロバガンダ映画。
町田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「強盗(テロリスト)の行為に無関心を示したことで自身の養父(家族、同胞)が殺害され怒り、法の判断(国際法)を待たず私的制裁を加え報復を果たす」という主人公の行為は、それが純粋な娯楽作品・勧善懲悪ヒーロー映画の中でならば完全に肯定され賞賛される。俺の好きな仁侠映画なんかこんなんばっかである。

しかし、そのストーリの中で軍事開発事業を扱い、更に国際紛争に適応できるメッセージ(「巨大な力を持つものはそれを慎重に扱うべき」云々)を含んだ作品に組み込むというのはあんまり上品じゃないと思う。馬鹿じゃないかと思う。

バグズ・ライフ』や『アンツ』でも感じたことだが、アメリカンチャイルドムービーの根底に流れるこの手の「アメリカの正義=軍事介入是認プロバガンダ」は一見すると良心的で筋が通っていてるだけに末恐ろしいものを感じる。(こういうのを根絶させようとは思わないが、これらに対するアンチテーゼに早く登場してもらいたいと思う)

俺は断固として、この映画で描かれた程度の「正義への認識」がアメリカの限界とは信じないし、信じたくない。そもそもそんなものをユダヤ資本の総本山に求めようとも思わない。(「戦争は恨みを呼ぶだけ、幸せになる人間などいない」というメッセージは素晴らしいが、それも直後のアメリカ国旗大写しでトントン。)

とか云って、そんなことにひっかりつつも、内容が面白ければ平気で平均点以上つけてしまう無節操な俺だけど、こんだけ迫力のないアクションシーン、チャチなCG、隣のオバサンとの安っぽい恋の駆け引き見せられても何にも感じなかった。アメリカン・エンターテイメントも地の底に落ちたもんだ。

サム・ライミ監督のことは良く知らんが、彼もかつての良心的B級映画の先達、テリー・ギリアム、ティム・バートン、スティーブン・ソダーバーグらと同じようにハリウッド・ビジネスのパブリック・イメージ回復のための<生贄>として消費され捨てられるんだろうね。

*表題のプロテイン映画というのは、あらゆる手段・手法を駆使し”アイ・ワナ・ビー・マッチョ”願望を満足させようというアメリカの国民性が滲み出た映画の総称として僕が勝手に考え出したものです。

(評価:★2)

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