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[コメント] セブン(1995/米)

七回忌。
町田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







数年ぶり再見して改めてその完成度の高さに関心。

なにより人物描写が入念。

ブラッド・ピット演ずる新米刑事は登場からしてあわただしい。街を歩けば肩がぶつかった通行人にガンつける粘着ぶり。車の中では終始ペンを使って手悪戯。落ち着きが全く無い。狩猟犬を三匹も飼っていることから支配欲・征服欲が強いことが覗えるが(妻に対しても)これは赴任の動機が「功名心」であることを裏付けるに充分。彼は地下鉄の騒音に悩まされる自宅について「不動産屋が毎回5分しか家を見せなかったから変だと思った」と弁解するが、観客はこのとき既に彼の性格を知り尽くしているから失敗の原因はそればかりでないことが解る。令状が無いのにドアを蹴破ったり「新聞記者」を手荒に追い返した挙句自ら名乗ったりと、後先考えない行動が多い。

モーガン・フリーマンが演ずるベテラン刑事は引退を心待ちにしている。平静を求めている。熱意は既に涸れ果て使命感だけで仕事に臨む。熟考型の彼は騒音で思考を妨げられるのを嫌う。ブラピや署内の雑務係は勿論、上司までをも一喝で黙らせるほどの威厳を備えている。(だから銃を抜く必要は無かった。)ただ今回の事件が伸展するに連れ彼の中で変化が起きる。熱意が再生する。図書館で「七つの大罪」を調査する際は熱中の余り、ポーカー賭博に励む同僚の騒ぎが全く気にならない。それどころかゲームを止め引揚げる彼らに向かい「寂しくなるな」と言葉まで掛けている。どうもらしくない。彼は少しだけ焦っていたかもしれない。

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これらの綿密な描写は主役の刑事二人を血の通った人間たらしめていると同時に、ラストで二人がとった(とらざるを得なかった)行動への複線として見事に機能している。頭に来るほど良くできた脚本だね。

(評価:★4)

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