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[コメント] 噂の娘(1935/日)

この劇に登場する人物は、其々に性格も考え方も異なるが、しかし、皆一様に焦っている。何かに追い立てられている。それは何故か。たぶん昭和十五年という時代がそうさせたのだろう。
町田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







成瀬の視線劇は既に完成している。

とりわけ、姉と妹と、世話焼きの伯父さんが橋を歩きながら会話するシーン、妹の暴言に狼狽する藤原釜足の泳ぐ目線!その気まずさの描出は、カメラのこちら側に確かに千葉早智子が存在するということを、体感させてくれる。

ところで、この物語、普通に見れば、手前勝手な家族の中で孤軍奮闘する昔気質の貞女の自己犠牲精神を讃えている、ということになるのだろうが、それを敢えて曲げて、ちょっと斜めから眺め、一種の復讐譚、脱出劇、と捉えることは不可能だろうか。

つまり、妾への勧誘は手の込んだ妹・妾への復讐であり、家業の破綻は父・祖父への現実的制裁(警察へのタレコミを誰の行ったか、明かにされていない)、そうやって生母の復讐が完了するころには、自分は金持ちのボンボンに嫁いでいて左団扇、愛はなくとも理財の才を発揮して、第二の人生を謳歌しようという「女系家族」顔負けの女傑の・・・違うか。

(評価:★4)

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