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[コメント] 座頭市喧嘩太鼓(1968/日)

これは面白い画作り。セット内に於いてもロケシーンに於いても常に垂直線が画面を区切っている。
町田

セット内シーンに於いては、柱であり、屏風であり、天井から吊られた花飾りであり、またロケシーンに於いては樹木であり、ローアングルで捉えられた人物の脚部であり、はたまた荒野に生えたススキであったりする。

もちろん、これは伊達や酔狂で成されているわけではない。これらの垂直線は常に人物の前後に配置されており、画面内の遠近感を際立たせている。今回は、市と三田佳子演じる娘、二人の人物の心理葛藤がキモであるから、二人の現実的、或いは心理的距離感を表すのに、この手法は最大限の成果を納めている。藤岡琢也演じるやくざとの別れのシーン、市の呟く「ありがとうよ」には男と男の情感が溢れ出ていた。

しかし本作にも穴はある。それは佐藤允演じるライバル剣士の存在である。このキャラクタ、ストーリに全く寄与していない。彼はどこからでも現れ、そして何もせず退場していくのみだ。ラストの対決も、宿命、とか大袈裟な言葉を持ち出せば、納得出来ないこともないが、余りに唐突である。正月の一番太鼓に聴覚を奪われ苦戦する市が、太鼓が止むと同時に本領を発揮、足を払ったあと居合で一回、返しで一回、更にもう一回と計三回、目にもとまらぬ速さで敵の胸を切り裂く、という剣戟自体は非常に魅力的であったが。

(評価:★4)

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