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[コメント] マリア・ブラウンの結婚(1979/独)

ファスビンダーが映画人であることの確固たる事実。そしてハンナ・シグラの執念。無名時代を共にした二人のお互いの執念の結実、そして愛。憎悪と無情の愛。可愛さ余って憎さ100倍。
chokobo

今となってみるとファスビンダーの死が、マリア・ブラウンの死と重なる。この根拠と脈絡のない結末。彼にとってアンナ・シグラはマリア・ブラウンそのものだったのではないか?

ファスビンダーシグラ、二人は青春を共にした戦友である。短い期間に二人は演劇と戯曲の世界で、戦争をモチーフにした題材でともに戦い、演じた。

日本とドイツは同じ戦中戦後を歩むべきであったろう。しかし、日本という国の国際的立場は支配によるものと見てとれる。しかし、戦後の始末をつけようとする努力は映画の社会でも多くの者が挑戦しているがファスビンダーは、あくまでもモチーフ(題材)にしているというだけで、戦争なり戦後のありかたにイデオロギー的な主張をしているようには思えない。

この映画のアンナ・シグラの演技は狂気である。この執念。生きるための執念。ドラマっを作る上で”戦争”ほどきっかけを大きく変えることができる要素はない。その戦争によって”思い”がことごとく裏切られ、つぶされ、人生そのものが大きく変わる、という設定は、この主人公を、そしてアンナ・シグラをも狂気に陥れたように思えるのだ。

ファスビンダーも、そのことを承知で彼女にこの役を与え、自分自身もこの狂気を共有しようとした。溝口健二田中絹代にゆだねた時のように。

(評価:★4)

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