[コメント] 息もできない(2008/韓国)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
僕はこの主人公に若い日のビートたけしさんが重なりました。
ツービートとして毒舌的な漫才で一世風靡したあの頃。
近いところでは『血と骨』という作品の金という男性像。
ビートたけしさんが真剣に演じたらこうなるんじゃないかと思わせますね。
冒頭から暴力が渦巻くこの作品ですが、丁寧に見ていると、その主人公のどうしようもないキャラクターが”照れ隠し”なのではないか、と思わせるんですね。これもビートたけしさんぽいですね。
韓国というと経済が絶好調のように見えますが、国内の貧困層と、借金取りという職業のかもしだす人間ドラマが見事に誠実に表現されていてとてもよかったと思います。
『誰も知らない』で是枝裕和が世界的に評価された現象に近いものを感じますね。
新聞やテレビなどでは表現できない現実。
少し前に評価された『長江哀歌』もそうですが、もはや映画はテレビのためのものではなくて、映画としての映画を撮ろうという姿勢に満ち溢れているように感じます。
同じこの年に日本で作られた『悪人』にしても『告白』にしても、とてもテレビで上映しにくい作品です。
この『息もできない』だって同じですね。
映画が映画として存在するために、世間の耳目に頼らない真実性と正義。
映画の正義が問われる、素晴らしいテーマだったと思います。
主人公は女子高生の膝の上で嗚咽するシーンには胸が熱くなりました。
こういう映画が撮れているうちは、まだまだ映画は大丈夫だと確信します。
2011/01/13 自宅
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