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[コメント] 疑惑の影(1943/米)

その後のヒッチコック作品のベースとなる内面心理の恐怖ですね。心理が変化してゆく過程が実に良く描かれています。文句なし!
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







知らなかったのですがテレサ・ライトさんて『レインメーカー』に出演なさっていたんですね。知りませんでした。

この映画の彼女を見ると、その若々しさ少女らしさが存分に表出されていて、そしてお年を召された彼女の姿を想像して、とても感動しますね。

この作品の彼女のいたいけな少女心理の変化を見事に表現する姿は素晴らしかった。

実はこの映画の前に、同じヒッチコックの『断崖』という作品を見たんですが、よくよく考えると、ヒッチコック作品には二枚目の男性が詐欺師や犯罪者だったりするケースが多いかもしれません。

ダイヤルMを廻せ』とかね。

そして、いずれにせよ、そういう犯罪者的な存在を一途に信じながら、何かをきっかけにどんどん疑いの気持ちが倍増してきて恐怖を感じるというセッティングもヒッチコックの王道ともいえるパターンですね。

ジョセフ・コットンはこの映画では二枚目の犯罪者。ヒッチコック作品にフ相応しい紳士ぶりと犯罪者的な影の部分が実に合っていました。

ヒッチコックのテクニックについては、私などが偉そうに語るものでもありませんが、とにかくディテールにこだわる彼の好奇心が映画全体を覆っています。一級の芸術品ですね。

ところどころに出てくるダンスシーンとそこに流れる音楽の使い方も見事。

主役の少女が口ずさみながら「なんていう曲だったかした?」などと思いだそうとするのを、ジョセフ・コットンがテーブルのグラスを倒して話題をそらそうとするくだりなどは、後のヒッチコック作品ばかりでなく、色々なシーンで使われますよね。

さて、1943年。この映画が製作された頃、日本では黒澤明監督が『姿三四郎』を撮ってデビューしています。第二次世界大戦中のことなんですね。

そういう戦火の中で、このような一級の芸術品を見事に作り上げるパワーは芸術家としての才能以外の何物でもないようなきがします。

2010/08/07 自宅

(評価:★5)

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