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[コメント] 幻の光(1995/日)

誰も知らない』から遡ると、一段と輝きを増すデビュー作です。
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この是枝裕和監督という人は、相当映画を知り尽くしている方ですね。

誰も知らない』から始まって『ワンダフルライフ』なども拝見してみて、このドキュメンタリータッチが彼の特徴かと思っていたら、なんとこの作品はアンドレイ・タルコフスキーの映像と思しきシーンが後半に描写されていてドキドキしました。

特に、最後の葬列を一人で追いつづける主人公の女性の姿を望遠でずっと追い続けるあのシーンは素晴らしい芸術品だと思いました。なんであんなすばらしいシーンを撮ることができるんでしょう。

生と死と孤独を見事にワンシーンで撮り上げる力量は凡人にはできない技術センスですね。

この映画、登場人物の衣装があらゆる場面で心情を表現しているんですよね。特に女性の服は、そのほとんどが”黒”。この黒い衣装に身を包んでいる時の主人公が実に悲しげで、それだけでもこの映画の価値が見出されますよね。

これまでのどの映画にも属さない、単純ではない日本人女性の心情を環境の変化(夫の死)を乗り越えるために寡黙に悩み続ける姿に胸が痛みました。

タイトルが、後添えの夫の父がかつてみた海の向こうに見える光であることで、この映画が一気に客観的になるところも見事。

素晴らしい作品でした。

(評価:★4)

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