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[コメント] 八つ墓村(1977/日)

落ち武者の人数が七人だったら、村を救った英雄になったかもしれない。落ち延びたのが一人多かっただけで、一転祟りをなす怨霊に変わってしまう数の不思議 →
木魚のおと

落ち武者たちの主家は、言うまでもなく尼子一族。この尼子は出雲地方を治めた豪族でした。

「出雲」「八」とくれば、想起されるのはこの地方に伝わる「ヤマタノオロチ」の伝説。 一説によれば、ヤマタノオロチとは、大和政権に従おうとしない出雲地方の8つの豪族たちを、「官軍」スサノオノミコトが征伐した故事が神話となって語られているとか。 村人たちは、落ち武者をスサノオノミコトとの戦に敗れたヤマタノオロチになぞらえて、逆賊として忌み嫌うことになるのです。 神話では、スサノオはヤマタノオロチに酒を飲ませて油断した隙にこれを討ち取ります。 尼子の落ち武者たちの討たれ方となんと酷似していることか。 (それに、村人が落ち武者を騙し討ちにした席で演じていた神楽は、スサノオの大蛇退治ではなかったか!)

さらに村人たちを幻惑したのは、彼らが所持していると噂される「カネ」の問題。 ヤマタノオロチは敗れたのちに、その尾から天叢雲剣(のちの草薙の剣)を生み出します。 これは、ヤマタノオロチの正体が製鉄技術をもった土着民族であり、彼らを征服したことの象徴であるとされています。

尼子一族の落ち武者たちも、金属に関するものを隠し持っていました。お家再興のための軍用金です。 その軍用金は洞窟の奥に隠されていました。その場所の名は、「龍のあぎと」。またしてもヤマタノオロチ伝説をなぞらえた設定の登場です。 この軍用金が後に誰の手に渡ったか、それについては原作のネタばれにもつながりますので、下記の拙文をお読み下さい。

http://www.yokomizo.to/note/yatsuhaka.htm (『八つ墓村』もうひとつの読み方)

(評価:★4)

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