[コメント] プライベート・ライアン(1998/米)
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この映画は最初の30分だけ観ればいい映画なのか。後はオマケであり,辻褄合わせの穴埋めの,出来合の真似事なのか。 ぼくは視点のない視点など存在しないと信じる者だ。スピルバーグは過去の戦争映画に生ぬるさを感じ,映像によって恐怖を体感させることを目指した。だからあの30分間が評価されることは彼にとって成功であるはずだ。しかし何故,彼はそれを描いたのか。 ぼくは後半の小隊の進軍にも心を打たれる。『シンレッドライン』と比較するのは進軍の場面であり,その上でぼくは『プライベートライアン』に軍配をあげる。 あそこまでリアルに戦闘を描こうとしたスピルバーグの狂気を,ただの野心と受け取って,結局は「観客」として楽しみ,星5つというのなら,こんな哀しいことはない。
・・・ところで,巴さん・はすみっちさんも触れているようだが,観るものに少なからず違和感を与えるあの星条旗は何なのだろうか。
星条旗はいわずと知れた愛国心の象徴であり,一身を祖国に捧げた英霊への尊敬の象徴である。映画でもそのように扱われている。 しかし,嘗ては恐らく真面目な教師であり,多くの教え子達を戦場に送ったであろうジョン=ミラー大尉は,基本的に全く厭戦的である。彼は他の多くの兵士と同じように出来るだけ自分を無機質な存在にしようと心掛け,或る意味ライアン救出を正統に全うしようとしているが,或る意味それに何の意味も見出していない。この人物が最後の最後で殆ど無意味に戦死し,それに被さってゆく星条旗とは,何という皮肉なのだろうか。
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