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[コメント] あゝ、荒野 後編(2017/日)

徐々に馴染んできた登場人物達が交錯し、ついにその火蓋を切る。☆3.9点。
死ぬまでシネマ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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ヤン=イクチュンの演技が見事。菅田将暉は芸達者だが若さが弾けている。ユースケ=サンタマリアは、彼にとって一番の嵌まり役と言えるだろう。高橋和也もつくづくいい役者だ。

前篇で異物の様に存在した学生グループは、後篇では残滓の様に現れるだけ。今野杏南(のヌード)・モロ師岡を出す為だけなら無くても良かった。ただ、この違和感は監督が意図したものなのかも知れない。この映画では介護参画義務法は徴兵令だとする学生デモが時折登場するが、その異物感も半端無い。物語や登場人物達から完全に無視され、切り離されている。学生グループの一人萩原利久菅田将暉の目の端にも映らないボンクラとして描かれ、そのボンクラに「自衛隊に入って戦いを経験する。介護は汚ないから嫌だ」と言わせる。

木下あかりに捨てられた母親=河井青葉が出てきてユースケ=サンタマリアとSEXするが、結局娘と再会する事はない。今野杏南は逆レイプの様にヤン=イクチュンに挿入までさせるが途中で拒絶されてしまう。詰まりこれは比喩であり、母親である必要も無いし自殺反対運動の女子学生で無くても良かったのかも知れない。五輪不況に突入した日本では最早テロも日常化しつつあるが、学生デモとの関係は不明で、しかも作品自体はそこに全く関心がないとして無視する。

一期一会。交錯した人々の間で、一部では火花が起こるがいずれは消え、また一部ではすれ違い何も起こらない。皆それぞれの「戦い」を抱え、それぞれの生にのみ傾注して行く。その中で、或る二人だけが放った強烈な光。スローガンを連呼するだけの政治運動の無力さ(愚かさ)を強烈に風刺している。

     ◆     ◆     ◆

後篇で俄然二人の動きが良くなるのが佳い。菅田将暉はまだパンチが軽く、映画的にはもう少しパンプアップして欲しかったが。しかし前篇で既に倒れた相手への執拗な加撃を行なっているのに、対イクチュン戦ではKOした相手を連打で撲殺しているのだから、プロ資格剥奪は必至だろう。周囲もそれを止めなかったのだから、オーナーライセンスも剥奪等になるだろう。もう廃業だから気にしないだろうが。

(評価:★4)

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