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[コメント] 64-ロクヨン-前編(2016/日)

警察組織の中で足掻く男と、そこに絡んでくる大小様々な犯罪を、中々上手く描いている。☆3.6点。[reviewは主に佐藤浩市について]
死ぬまでシネマ

この映画は先にNHKでドラマ化され、2015年にピエール瀧主演で放映された。横山秀夫原作でNHKドラマ→映画という流れを考えると、当然『クライマーズ・ハイ』を思い出さない訳には行かない。そこへ佐藤浩市の主演である。

佐藤はNHKドラマ版「クライマーズ・ハイ」('05年)の主演を張った。『クライマーズ・ハイ』('08年)のreviewにも書いたが、当時の佐藤は相当意気込んでおり、その他のキャストの好演の援けもあり、ドラマ版は佐藤の代表作になったと思う。しかしドラマと映画ではどうしても映画の方が歴史に残るので、いま画像検索をかけても出てくるのは堤 真一ばかりなのである。俺の予想では佐藤はきっとこう言った。「やっぱり映画じゃなくちゃな〜、やんなっちゃうね!」しかし私は堤版より佐藤の方が佳かったと今でも思っている。

一方今回の『64』は、前編の段階で既にドラマ版に軍配は決したと思う。そこには幾つか原因があるが、最大の原因は役者佐藤浩市の勘違いだと思われてならない。この人はデビュー以来、もうずーっと勘違いを続けている。この歳になってまだこれでは、今後脱却できるかは非常に悲観的だと言わざるを得ない。ライバルと言われる中井貴一は若い頃から気づいていたのに、未だに真田広之になろうとしている。妻夫木 聡だって不器用なりに足掻いているのに、自分はそんな必要が無いと未だに思っている。そういった自分が見えておらず、折角名作「クライマーズ・ハイ」を残したのに『64』では今度こそ映画で主演を!と張り切っている。もう老境に期待するしかなかろう。

とはいえ、佐藤以外にも考える事はある。横山原作はそもそも映画のサイズに合わないのではないか、という事。正直『64』も前後編にする内容ではないと思うが、それでも分割する事に意味はある。組織と人間の軋轢、家族の葛藤、年月・変化、そういった横山原作の濃厚なドラマを描くのには、実は映画は不利だ。警察署内・記者クラブ・電話ボックスといった狭い空間を描くのも、テレビの方が向いている。

佐藤以外の役者も力不足を感じる。三浦友和永瀬正敏奥田瑛二辺りはいいとしても、榮倉奈々は完全に山本美月(ドラマ版美雲役)に負けている(美貌は寧ろ山本に不利)。広報室諏訪役でも綾野はまた上滑りで新井浩文の方が補佐役としては座りがいい。しかしこの件は上記映画⇄ドラマの問題で、2人の所為ではないのかも知れない。瑛太永山絢斗は昔から俺の中では同一人物なのでこの起用には吃驚した。

(↑後日もっと吃驚する事に… こっちが事件だYo)

(評価:★3)

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