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[コメント] かぐや姫の物語(2013/日)

後世に残すべき名作が目の前に現れる事の幸せ。☆4.6点。
死ぬまでシネマ

最近映画を観ても以前の様な魂の抜ける感覚が少ない。子供の頃の『キタキツネ物語』、『スパルタカス』『スカーフェイス』『LA大捜査線』『イデオン発動篇』『ダンサーインザダーク』『Dear Wendy』…(死ぬのが多いな)。

そんな自分にとって目を奪われる様な場面、恍惚としたラストを持った作品を新作として観られる事は、何とも幸せな事である。

震災に衝撃を受けた宮崎 駿が「今はお伽噺を描いている時じゃないんだ」という(大意)ような事を言って自分を鼓舞し『風立ちぬ』を完成させた時、「今でしょ、では全然ないかも知れないが描く価値はある」という(大意)ような事を嘯いて作品を完成させ得た高畑監督は、矢張り凄いとしか言いようがない。

作品が始まって先ず驚いたのは、俳優地井武男の生き生きとした演技だった。私はあの赤ん坊の描き方には少し阿漕な印象を持ったのだが(物語として必要な事は理解したが)、それを納得させ得たのは地井の感情を爆発させた演技だった。

作画が出来上がってから音(声)を入れる通常の方法でなく、先に音を入れる方法であった為に、この事が成立したというのも何とも言えない。

夏八木 勲といい、今年は映画館が墓参りの様な、繰り返し切ない想いのさせられた年ではあったが、そこで逢えた仏さんのお姿はいつも見事なものだった。

実は映画館を出て暫くしてから、作品の印象がボヤケてきてしまっていた。『風立ちぬ』の上に突き抜けたのもが徐々に下に落ちて行く様に。自分の中で消化し切れてなかったせいだろう(steelingさんの仰る通り)。しかし再見して別次元の位置にある事を理解した。

作品の出来からすれば蛇足でもあろうが、自分にとって残念な点を。先ず姫が突然逆上し、故郷へと脱兎の如く、般若の如く駆け出すシーン。予告篇でも使われ物語の一つのピークであるが、その必然性が自分には良く分からなかった。否、人間の琴線に触れる瞬間は突然やって来る事は承知している。しかしそこに至る鬱積を後もう少し描いて欲しかった(或いは「心無い台詞」の内容を)。また、そのシーンでの姫の(般若)顔が、残念乍ら全体と統一されていなかったと思う。愛らしい姫の顔が彼の様に…、というようには見えなかった。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)Orpheus[*] HAL9000[*]

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