[コメント] 沈まぬ太陽(2009/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
登場人物・団体は全て架空のものであり、実在の人物(小倉寛太郎)・団体(日本航空)等とは関係がありません。
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元旦の朝、羽田ならぬタイの空港から<架空間>に飛び立ってゆく「バーチャル花丸(鶴丸ならぬ)」こそが全てを示しているのだ。
俺は日航社員だった事は一度も無いので現実の内部事情は知らない。日航幹部の腐れぶりがどれ程のものだったかは解らないが、労組組合員に対する不当労働行為はこの程度ではない筈だ、と断言出来る。映画では表現出来ない誹謗や圧力もあった事だろう。他人事であれば、日本人の海外渡航がまだ珍しかった時代の海外出張は寧ろ羨ましいのではないか、などと軽口を叩く事も出来る。しかしこの映画を観て、家族と引き裂かれ、親の死に目にも会えないこの異例の長期配置が、本人の希望でもなく、真に会社の必要からでもなく、ただ組合憎しの報復人事、否、会社というより寧ろその中に巣食う腐れ糞幹部(人間)の胸先三寸によってなされて来たと言うこの惨状が、誇り高き個人にとって如何に酷く醜く恐るべき仕打ちなのか、と深く心を打たれた。利根川ならぬ中曽根康弘が糸を引いた国労潰しを見ても、「会社」が社員に行なう仕打ちは辛酸を極めている。
俺は映画の中に現実の数多のひとびとの苦難や怨念を見る。『スパルタカス』での無限に続く十字架の列に、『LOTR 二つの塔』での駆逐される避難民に、そしてこの作品での御巣鷹山での体育館を埋め尽くす棺桶に。そして恩地と同じく会社に裏切られ引き裂かれ打ち捨てられたであろう数多のひとびとの姿に、心が痛んだ。
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