[コメント] 重力ピエロ(2009/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
作品が文学的かどうかなどこの作品に関してはどうでもいい。話が映画として面白いかどうか、だ。(俺は原作者まったく知らないからね)
家族を巡る物語なのだから犯罪ミステリーでは無いのかも知れないが、しかし犯人がやはり弟だったとなるとどうも作品世界が小さくなると言うか、デキレースっぽく見えてしまう。結局弟は実父と兄に見せる為に犯罪を犯していた、と。犯人は弟としても、純粋なる「他者」の介入でもう少し世界の閉塞性=虚構感を打開出来なかったか。
そう、ただでさえ少ない登場人物が更に収斂してしまうのはかなりキビシイ。例えばバーのカウンターにいた謎の女性があの「夏子さん」だったり、放火現場でぶつかった「明らかに渡部篤郎みたいな」男があの忌わしき連続強姦魔だったり…。
吉高由里子はいい娘だし役者としてもかなり有望だと思うが、流石にこの「解説者」の役は荷が重かったようだ。… もし原作の「夏子さん」自体がこんな解説者であるなら、映画に於いては彼女の役割を改変するべきだったろう。
渡部篤郎も大変な役をやらされた。最後のこのこ殺されに行った事を観客に納得させる位の「狂気」は出させてあげても良かったのではないか?
皆さんがおっしゃるように小日向文世は見事に演じてはいるが、癌末期という気力も知力も衰えた時点でそれでも尚、息子たちの異状に気づき、諭す、という事の凄さまでは表現出来ていなかったように思う(これも、そう見せられなかった演出の問題と思うが)。
この映画は家族の問題と共に、2つの連続犯罪を描いている。即ち強姦と放火だ。共に被害者の事を考えない(相手の気持ちになれない)事で成立している犯罪だ。対して最後の犯罪である殺人は怨恨(と浄化?)が背景にある。最後に父と兄弟で交わされる会話は家族の問題には解決を与えたのかも知れないが、2+1の犯罪については結論が見えない。この家族の中ではどう解決されたのだろうか? 最後の最後でそれが最大のネックになって残されてしまったのは残念だ。
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