コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ナイロビの蜂(2005/独=英)

残念ながらファインズのお蔭で『イングリッシュペイシェント』と似たもののイメージが拭えず、しかも『イングリッシュ…』の方が自分にとっては良かった。(reviewでは『イングリッシュ…』のネタバレもあり)
死ぬまでシネマ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







内容的にはかなり異なる作品である事は解るのだが、「西洋文明と異なる異国の広大な黄色い大地で、回想中心に愛の物語が続く…」となるとファインズの配役自体ぼく的には避けて欲しかった。最愛のひとを失う悲しみや、苦悩の末そのひとの後を追う事になる主人公の悲劇という点で、演出面に於いて『ナイロビ』は『イングリッシュ』に負けていると思う。

それだけでなく、物語の運び方も今ひとつ良くない。ぼくには「ガーデニングにしか興味のなかった夫が、妻の生命と情熱をかけた仕事の秘密を知り…」という中心に位置すべき設定[意外性]に乗り切れなかった。考えてみるに、監督は最初から回想中心の物語を予定していたのではなく途中から変更したらしいが、その所為ではないか。妻の死を冒頭に提示するのは、ポップスで言えば曲の頭にサビでブチ上げてから1コーラス目に入るようなもので、景気は良くなるのかも知れないが、平穏だと思われた夫婦生活の裏で実は…、というミステリーの効果を半減させている。妻の行動原理を最初から強く提示しているので意外性が減り、更には夫の平凡さが霞んでしまった。つまりぼくは「こんな活動家の女性を妻にするなら夫も…」と考えてしまい、ファインズが大使館仲間から外される程の脳天気な人物であると最後になるまで気づかなかったのだ。それでは折角の素材が勿体ない。この点でも『イングリッシュ』の方が愛と切なさに満ちた意外性があった。

サハラ以南のアフリカと言えば、世界の様々な悲惨が集中している地域である。貧困・戦争・AIDS…。映画で扱われる事は殆どない。余りにも理不尽に生命が軽く世界中から見捨てられているこの地域を、商業映画で取り上げた勇気と功績は素晴らしいと思う。そしてそれだけに残念でもある。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)おーい粗茶[*] ヒエロ[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。