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[コメント] ぼくを葬〈おく〉る(2005/仏)

エリック=バナを思わせるメルビル=プポーの風貌。その瞳の切実さには打たれたが、物語は悲しすぎた。☆3.7点。
死ぬまでシネマ

**ネタバレ注意**
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個人主義を貫くフランスらしい映画だと思う。ひとは独りでこの世にやって来て、独りこの世から還って逝く。孤独は避けがたいものの様に思われるけれど、父や母に迎えられた誕生や、家族に葬られて逝く死もある筈だ。

ロマンは「同じく死にゆく者」である祖母だけに自分の病を告げ、父にも母にも姉にも恋人にもそれを明かさなかった。彼は孤独という方法で<自分を葬る>事で、やはり何かを守り、安らぎを得たのだ。海辺で息を引き取る彼の表情はそれをよしとしているが、孤独が彼にとって本当に最善の逝き方だったのだろうか、と考えてしまう。

最期に彼は幼かった頃の自分にも別れを告げ、ひと知れず息を引き取るのだが、ぼくには『ベニスに死す』のラストが強く想い出された。同性愛と死というテーマでもあり、監督も意識していたのかも知れない。

同性愛の中には<自己愛>の一面があるのかも知れない、とも思う。言い換えれば異性愛は<他者(異なるもの)への愛>に他ならないから。ロマンは自分以外を愛せなかったのではないだろうか? 赤ん坊の存在が彼に変化をもたらす可能性はあったが、彼は先に逝ってしまった。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)煽尼采

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