[コメント] ダークナイト(2008/米)
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宣伝や設定には心を魅かれ、試写会に誘われて足を運ぶのだけれど、毎回その後味の悪さと、人間に対する愛情のなさに「観なきゃよかった……」と思う作品の監督の名前が、いつもクリストファー・ノーランと言うものだと気づいたのは、ここ数年のことだった。
前作「ビギンズ」では、アメコミの正義の世界観と、ノーランが親しんでいる厭世観が、水と油のように交じり合っていなかった印象だったのですが、ここにきて、彼は「ジョーカー」と言う界面活性剤を得て、水と油を見事に混ぜ合わせました。
前作ではいきなりすぎて浮いていた、ノーランの精神障害(者)への(なぜかある)強い親和性も、ジョーカーの周囲に配置することで、「(あくまでも)フィクションとしての立ち位置」を自然に獲得しています。
それでも、今回いちばん印象的で、正直少し意外だったのは、今までの彼の作品に一度も見られることがなかった、「人間の良心」を描くエピソードがあったこと。
それは、それぞれ相手の船を爆破するスイッチを持った、二つの船の乗客がとった行動……。もしもあの話がなければ、この作品全体の印象は、多少違ったものになったのではないでしょうか。
これはどういう心境の変化だろう?「ジョーカー」と言うキャラによって、思う存分自己実現ができた監督の心の余裕でしょうか。そう感じるくらい、この映画はノーラン監督の「ジョーカー萌え」によって終始成立している作品だと思う。これほどのこだわりのキャラ表現を求められ、そしてそれを実現できてしまった俳優にとっては、本当に大変な所業だったのではないかと思います。
さて、ジョーカージョーカー言ってますが、私自身にとっては、実は今回は「トゥーフェース」の方が印象的で、興味深かったです。地味ながら、かなり難しい役どころが、魅力的に演じられていたのではないかと思いますです。
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