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[コメント] バットマン ビギンズ(2005/米)

男性キャラや、細部は魅力的だけど、現実的で厭世的な監督の資質と、アメコミハリウッド映画のファンタジーが水と油で、哲学的な台詞が上滑り。肝心のクライマックスの娯楽的なカタルシスも描写不足で、派手な演出ほどには観ていて盛り上がらなかった。
uyo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







とにかく「おじさんがかっこいい映画」でした。

亡くなったお父さん、かっこいいですね。マイケル・ケインの役柄、おいしいですね。主人公と二人でバットマンの衣装を作り上げるところなんか微笑ましかった。ゲイリー・オールドマン、個人的には、今まで見た事がなかった「フツーの人」を地味でありつつ確実に演じきっていて存在感がありました。主人公と対峙した時の、トム・ウィルキンソンの受け答えの演技も(バットマンにしてはちょっと過酷すぎる内容だけど)重みがあってよかった。ルドガー・ハウワーも、さらりとナイスキャストでした。

精神錯乱を起こそうとする陰謀や、精神病棟の描写が真に迫っていて、ここが監督の面目躍如なのだろうけれども、「バットマン」の世界観とあっていたかどうかと言うと疑問。毒物散布で町中を精神的に汚染するって、ちょっとハード過ぎる・・・。の、割には、一方、まるでお約束な展開で、走る電車でのアクション、ちょっと意外な人が真犯人でしたなど、色々と細かく計算し尽くされているわりには(石器を使ったエピソードとか、いかにもハリウッド脚本的?)、予定調和の域を出ていないな、と思ってしまいました。

ある程度の人数(製作費を回収して、儲けを出すくらいの)の観客に、すべからく「安心感」を持って、映画館を後にしてもらうためには、「こんなものなのかなあ」と言う消化不良な印象。多くの人の生活がかかった、大金を賭けたプロジェクトとしてのA級映画=「商品」としてはこの無難な完成形(スタイル)がベストなのかもしれないけれど、個人的には、監督の得意分野@ハードな描写と、監督の苦手分野@娯楽としてのカタルシスが、うまくブレンドされずに終わってしまったのではないか、と少し残念に感じました。ハードさを全面に出されても厭なので、うまくブレンドされていればなあ、と言う残念さです。

理想としては、リアルな描写が程よくぴりりと辛みを効かせていて、更に、スカッと楽しいワクワク感が全体にあって、「うおお、モノレールどうなっちゃうの〜〜」とか、「バットモービル行けえええ!」と文句なく楽しめたら、と言う感じでしょうか。

しかし実際の出来は、「正義の味方が、パトカー粉砕するってどうなの・・・」と言う「リアリズム」に監督の感性は傾いてしまいがちで・・・。隔靴掻痒となりました。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)たかひこ

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