★4 | フロント・ページ(1974/米) | 終焉の気配が立ち込める夜間シーンの連続を蛍光灯等の画面内光源で処理した撮影が安くも味わい深く今更のスラプスティック風味のコマ落とし等も許せるのは、監督・主演の高齢トリオが醸す一種の翳りが愛しき侘しさとなり絶妙のコントラストを成すからだろう。 | [投票] |
★3 | ネバーエンディング・ストーリー(1984/独) | 最後に開かれるとしても所詮は本の中の閉じた世界の物語というのがどうしようもない閉塞感を感じさせ息苦しく空虚である。ファンタージェンの世界造形が一貫した統一感を持つのは好ましいが西洋童話のクリーチャーたちがお子様向けに愛くるしいのも興を削ぐ。 | [投票] |
★2 | アッシイたちの街(1981/日) | 中小企業を題材に虚々実々の親会社との攻防を描くのであれば、脇を固める山本ファミリーが俄然水を得たであろうに、工員バンド「アッシイ」が高らかに労働讃歌を歌うアナクロぶりが観客の心を絶対零度に凍てつかせてしまう。老左翼の共闘の果ての墓場。 | [投票] |
★3 | J&S さすらいの逃亡者(1972/伊=スペイン=独) | 見かけはもとより遣ること為すことド汚なく且つええかげんな主人公の70年代マカロニ末期テイストの佳品。演出にはハッタリとケレンが垢抜けなくも窺え一応の訴求力はある。ひとことで言って変な映画だが例によってのんべんだらりとした展開が睡魔を誘う。 | [投票] |
★4 | 人間の運命(1959/露) | 故郷に残した妻子への思いと悔恨は巻き込まれた戦争の変転の中で瞬く間に後方に退くだろう。それを強いる過酷さと切り抜けた果ての圧倒的絶望と再びの希望は生きるってのは正にこういうもんだと思わせる。意外なまでの映像のシャープネスと役者の良さに驚く。 | [投票] |
★2 | 101(1996/米) | 擬人化された動物も漫画なら許容できても、実写となれば余りに胡散臭い。ブチ模様の犬を101匹も集めて人間の考えた話ににピースとして当てはめるのは奢りであろう。しかも救われんのが、そうまでされた犬達が余り可愛くないのだ。クローズがまあ見所。 | [投票] |
★4 | アニー・ホール(1977/米) | 多くのトリッキーな手法が試されてるが、先行者の素描か或いはお試し感拭えず数打ちゃ当たる的場当たりに留まるのだが、コンプレックスを武装し捲くし立てる台詞が同期することで追憶の中で愛惜へと置換される。キートンの普遍キャラも世界を平準化した。 | [投票] |
★3 | 男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花(1980/日) | 寂れた風情がしっくり来る寅に常夏の沖縄が似合ず、シリーズのキモである孤独感は表出されずじまいだ。又、リリーと同居するという決定的な設定を否応なく組まざるを得なくなってもシリーズ存命の為に、肝心要なところに踏み込めない煮え切らなさがイラつく。 | [投票] |
★3 | 猫が行方不明(1996/仏) | 文字通りの老若男女が混在し疎遠でもなければ押し付けがましくもないコミュニティ。そういう疑似リアルな優しい世界の中で今一な彼女の孤独感ばかりが逆説的に先行し痛々しくコメディと言うなら笑えない。ラストのセンスの良さが辛うじて作品を引き締めた。 | [投票] |
★3 | 香華(前編・後編)(1964/日) | 徹底的ダメ母と腐れ縁で振り回され続ける娘との編年記なのだが、どうにも母親の乙羽が熱演するほどに皮相にも柄じゃない感が浮き出る。エロスが不足なのだ。同じ有吉『紀ノ川』と比較してしまうのも痛く木下のビジュアルセンスの甘さが露呈する。 | [投票] |
★3 | 閉ざされた森(2003/カナダ=米=独) | 2転3転する展開だが顕わになる真相に余り意外性がないのが痛く、そこは演出力でカバーと行きたいが、大向こうを唸らせるハッタリズムに欠け、エッジの効いた楷書体の魅力に乏しい。トラボルタは久々に体を絞り気合い乗り充分であったが報われなかった。 | [投票] |
★4 | シェフとギャルソン、リストランテの夜(1996/米) | インディーズ映画でありながら多国籍国家に於ける民族アイデンティティを尖らず予想外の豊饒さでフィルムに残せてる。信を貫くことは結果如何に係らず気高い。そしてイアン・ホルムやイザベラ・ロッセリーニが当たり前のように出るのだ。信義の為に。 | [投票] |
★3 | リバイアサン(1989/米) | 『物体X』は多くの亜流を産み出したが、怪異譚的な序盤展開が魅せるこれはマシな方だ。だがモンスターが登場し出してからは次第にいってこいの展開になりマニュアルの馬脚を現す。その造形が人体融合的な二番煎じともなれば又かのうんざり感しか残らない。 | [投票] |
★2 | 暗くなるまで待てない!(1975/日) | 映画バカが映画を題材に撮ったオナニー映画で青いセンチメンタル感傷はある程度許容しても、ギャグの程度が低すぎついていけない。不遇時代の清順本人を一瞬ではあるが担ぎ出した一念岩をものプロデュース力は認めるが、それは映画の愉悦には直結しない。 | [投票] |
★3 | トロイアの女(1971/英=米=ギリシャ) | 米英仏のトップ女優を並べて本家のパパスをトリッキーに配した文字通りの汎大陸4大女優共演ギリシャ悲劇なのだが、汎大陸すぎて何だかバラバラな印象を受ける。個々には熱演してるのだがアンサンブルを形成するには至らぬ感じ。ロケとセットも同様だ。 | [投票] |
★4 | パーフェクト・ストーム(2000/米) | CGを見飽きたと感じる向きにもこの嵐の海の木の葉のような漁船には一驚を感じさせる強弱感の理想的表出がある。物語が割れるのも全く気にならなかった。鄙びた漁村の風情が良くダイアン・レインもいい歳のとりかたをした。奥床しい世界の片隅のドラマ。 | [投票] |
★2 | 乾いた湖(1960/日) | テロリストの誕生を語るのに社会的敗者を対比させるのが青臭い。しかも寺山はファッションとしてのテロルに憧れるだけで、それをヒトラー崇拝等の形骸でしか表現し得ない。そして否応なく彼の本質が敗者の側にあることを露呈させてしまう。遣りきれない。 | [投票] |
★4 | お気にめすまま(1992/米) | ニコルソンの尖ったキャリアの中で異彩を放つ弛緩コメディ。くだらない脚本だけに盟友ラファエルソンが監督でなければ出なかったであろうと思われる。そういう意味でプレミア級のレアムービーかもしれない。しかもバーキンが絶品で2度おいしい。 | [投票] |
★4 | チャーリーズ・エンジェル(2000/米) | 狂騒ムービーは数あれど真の意味での祝祭気分を醸し出させるには躊躇の無さと素直さが必須なのだ。天下に人柄の良さを轟かせるキャメロンと甘いも酸いも嘗め尽くしたドリュー(ルーシーはよう知らん)のコラボでしか成立しなかったと思われる。 | [投票] |
★4 | アタラント号(1934/仏) | 上流から下流へ田舎から都会へと小さな船で下って行くってのがミソで、流れる景観は開放と希望を表象する。船内密閉空間でも気の置けぬ爺さんとガキに囲まれ若夫婦を包む慎ましくも幸せな共同体幻影。幻影が失われた時代だからこそ、このユートピアは切ない。 | [投票] |