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けにろんさんのコメント: 点数順

★5aftersun アフターサン(2022/英=米)何ひとつ詳らかにされぬが11歳の見る世界は奥行きは浅く視界は狭い。父娘のバカンスツアーに差し込む陽光下の不協和音は歳を経た今鮮烈なイメージとして彼女を捕らえ続ける。何者にもなれず何者かを解放できない苦胆。その父の記憶を刻印しようとする試み。[投票(1)]
★5レッド・ロケット(2021/米)恩を平気で踏みにじり甘くすると付け上がるクソ野郎だが其奴なりの価値基準に正直なだけなんだろうという見方。フルチン素っ裸で叩き出されたんだから許したってよという猪突猛進バカへの愛。ショーン・ベイカーは優しい。そして随所でカメラ使いが斬新。[投票(1)]
★5ケイコ 目を澄ませて(2022/日)お年頃で引き際かとのモヤモヤはジム会長の引退に先手を打たれリアルワールドに開放される。瞬間、茶がかった世界は色を取り戻す。行間にある情感の流れを精緻にフィルムに刻印しようとの意図が随所で鈍色の煌めきを発現。モラトリアムの終焉に寄り添う覚悟。[投票(1)]
★5傷だらけの挽歌(1971/米)大俯瞰の冒頭からダイナー内でのアップ繋ぎに至るレンズ使いの緩急が全篇随所で炸裂する。強弱振り切ったキャラ群がストックホルムな凡主線を傍から複層化する。ニューシネマの残滓を呑んだ徒花はアルドリッチの底意地でどす黒いまでの燐光を放っている。[投票(1)]
★5LOVE LIFE(2022/日)「そこに居て一緒に生きてくれるだけでいい」という主人公の内面に押し込まれた感情が迸る佳境。深田にしては真っ当な展開と思う傍から映画はグラインドする。この結末も確かに1つの LOVE LIFE 。ラスト俯瞰ロングの長回しはアントニオーニみたい。[投票(1)]
★5マイ・ブロークン・マリコ(2022/日)ヘヴィスモークやシケた中華屋のラーメンや居酒屋での1人酒などがヤサグレてんです私的な自己顕示でなく内実を伴う必然に見える。それは彼女の「生」への本能的希求が十全に描かれるからで、マリコを悼む、救えなかった自分を苛むからではない。真女性映画。[投票(1)]
★5ダムネーション/天罰(1988/ハンガリー)矜持の欠片もなく人妻に復縁迫る男だが内面の葛藤や斟酌など無いようで只管にハードボイルド。不況に喘ぐ炭鉱町の切り取られた景観が研ぎ澄まされて男の虚無を照射する。そして堕ちた男は彷徨う荒地で躊躇いなく野犬と等位となるだろう。凄まじいまでの無情。[投票(1)]
★5あなたの顔の前に(2021/韓国)アンチドラマ叙法を脇に置きグラフィックな光彩を意識した撮影がホン・サンスの転回を思わせるが彼女の目に映る記憶の刹那な浄化として必然だった。呑み語り場の翌朝、断ち切られた縁に哄笑するイ・ヘヨン1人芝居の独壇。そして彼女を包む優しい光。[投票(1)]
★5家庭(1970/仏=伊)アルメンドロスの流麗なカメラの縦横性と意味を喪失した「仕事」のタチ味とディスコミュニケートなキョーコ・ヤマダという飛び道具が混在するが、香港映画と見紛うジャドのゲイシャメイクの衝撃が誘爆剤となり調和に至る。帰結のほろ苦さも絶品。[投票(1)]
★5火まつり(1985/日)殺風景な三叉路が山と海と街への線路を結びつけ揺蕩うような人の思惑が交錯し悠久の時間を刻む。その磁場のような空間を捉える田村の的確なカメラ。物語の因果や帰結は放逐され今村的土着信仰とアントニオーニ的描法のミニマリズムが渾然一体化。[投票(1)]
★5タバコ・ロード(1941/米)産んだ数も覚えてないほど子を育て送り出してきたが時代の波に呑まれ住む場所を追われる。バカで善良で極貧でモラルもない。悩みもするが明日になれば忘れる。それでも若しかしたら誰かが少しだけ手を差し伸べてくれるかもしれない。人生なんてそんなもんだ。[投票(1)]
★5ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ(2021/米)アンドラの声質を寄せつつ尚圧倒の破砕力を持つ歌唱が遥か時空を超えて我がひばりと連結。憑依が捨て身を多元化する。演出は彼女と当局との確執を深押ししない。薬塗れの疲弊の数年間を感情移入抜きで描くそれは優れて今村的な突き放しで開放的。[投票(1)]
★5偶然と想像(2021/日)想定の枠外から起動される世界の転倒3題噺で、そのシニカルと併存した人間肯定が濱口の稀有な天分とさえ思わせる。人と人が出会えばドラマが生まれるっても事はそう簡単じゃない。好きも嫌いも呑んで感情を寄せるふりしてうっちゃる。驚く位に軽やかに。[投票(1)]
★5カンウォンドのチカラ(1998/韓国)1泊2日の同性たちとの景勝地行で得るものなどなく心の傷を抉り合うのが関の山だったり。その不毛から目を背けて生きるのが人の営為だとばかりのホン・サンス節だが、凡俗な日常に時に差し挟まれる非日常が更なる業苦を垣間見せる。男と女はそんなもん。[投票(1)]
★5ビバリウム(2019/ベルギー=デンマーク=アイルランド)手垢ついた題材だがプレーンに押すことに徹して疲弊し精神崩壊に至る経年変化が十全。人に非ずは明確に表するが絵としての異形は一切出さぬことで恐怖は倍化される。イモージェンによる詰問シーンは背筋が凍る篇中の佳境。見せすぎる今へのアンチテーゼ。[投票(1)]
★5街の上で(2019/日)それで済むんかいの起と結ではあるが彼女不在の街を揺蕩う主人公を取り巻く群像が豊穣と言える多彩で澱まない。各々が恋愛の多様を背負い寸止めに関わってくるのがサスペンサブルで一貫した強度。佳境は自主映画スタッフの子との一夜。こっちの方が良いのに。[投票(1)]
★5BLUE ブルー(2020/日)持てる者を傍目に見ながら持たざる己を弁えて生きてきた男が、それでも潮時を悟ったとき鬱屈した思いを吐露する夜道の対峙。鮮やかなスウェー&右フックを見せられ全てが振り切れる。帳尻ついた人生に寄せる作り手の思いは走り出した2人の上空で揺蕩うのだ。[投票(1)]
★5ノマドランド(2020/米)冷たい外気から隔絶されたバン=繭の中で追憶の温もりに包まれ彼女は朽ちてこうとしている。経済変動が強いた生き方の変容やエコ回帰に耳を傾けても立つ地平が違う。手を差し伸べてくれる人にも黙して背を向けるだろう。断ち切ることができぬものがあるから。[投票(1)]
★5鬼ガール!!(2020/日)鬼一族のレゾンデートルと青春の悶々、或いは自主制作映画の戦略の不可解。分裂不可避のゴッタ煮がディープ大阪最深部のソウル=アホ言う奴がカバやねんのやったもん勝ち勢いの中でクロスオーバーする。自壊しかねぬシャバさもドキュメンタリズムが補完した。[投票(1)]
★5ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破(2009/日)新キャラで幕開け渦中に置かれる混迷が心地良い。陽性アスカの加入もあり内省的ダウナー世界が一気に拡張。矢継ぎ早のファクター投入で螺旋状に深耕されゆくかに見えた物語は終盤でシンジ・綾波の極私世界に収斂してしまう。それを最開放する昭和歌謡の朗詠。[投票(1)]