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[コメント] GANTZ(2011/日)

全く期待しないで観たけど、その期待は上回る作品だった。冒頭、主人公が地下鉄で呟く白けたセリフが全てを方向付けている。ただ、彼が出した最後の結論(?)というか動機付けにはあまり納得できない。
YO--CHAN

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







哀しいのは、その「自分の能力を発揮できる場所」が、あれほどまでにSFな設定でもないと実現できない時代だという皮肉じゃないだろうか。

冒頭、地下鉄をぼーっと待っている彼は、入社試験を受ける会社が「自分が望む場所」ではない事をいやほど自覚している。そのくせ、今にも地下鉄の轢かれそうな他人を、「助けてくれよー!」と名指しで呼ばれても、知らん振りをしてしまうのだ。入社いやといっても海外青年協力隊やユニセフなら入りたいというわけでもない。彼の冒頭の「私の信念」・・・というか、いかにも入社試験マニュアルあたりからコピーした様な心のこもらない信念が、意味を持った言葉として生きてくるのは、有り得ない程のSF設定で「こうするしかない」「生きてゆくには」「もう人が死ぬのを見たくない」と決定的に追い詰められてやっとだ。

いかにも最後、「・・・というのが、一青年の見た夢でありました」と夢オチにされそうな具合だけど、監督もそこのところは十分意識していて、フェイントもかけてくれる。

終盤、なんだかムリヤリに、日本映画のよくある展開になってきて、なんだか薄っぺらな表情で「ゆくぞっ!」と後編に続く。後編ではもしや、軽トラに乗って「ふざけるなー!ふざけるなー!」って、○○星人に突っ込んでゆくのかもしれない。

個人的な好みだけど・・・自分は彼のこの最後の姿勢が余り気に入っていない。冒頭と同じやる気のない表情で「仕方ないや、行くか」とやる方がまだしもだ。『卒業』の冒頭のダスティン・ホフマンの様に。

受け身で受け身で「生き残るんだ、100点とって、あいつを生き返らせるんだ」というところまで悟ってしまう。黒い球体の言う通りじゃないか?というか、これでは、形こそ違っても、イヤイヤ入社試験のための「信条」を棒暗記していた、あの時と同じじゃないのか?

例えば、なぜ、球体の中の男を身体検査しようとしないのか。gantzの本当の目的とか正体を探ろうという方向に向かわないのか。(外国映画なら大体そうだと思う)

例えば(「例えば」が多いなあ・・・すみません)、宇宙人の正体は、あの「黒いスーツ」であったとする。ゴムスーツ型生物で、そのくせゲームの遊興がないと生きてゆけない彼等は、ああいう手の混んだ事をやっていたとする。それを知った主人公は、彼等には思いもよらないある行動を・・・とか、そういう事を中盤から期待していました。(もし当たってたらすごいなー)

それとか、まるで場違いとしか言いようがなかった子供を抱いたおばあちゃんが、しかたなくヨボヨボの体にあのスーツを着て、「まあ、千手観音さまが!すみませんねえ」とか言いながら、銃をどんどんぶちかまし、主人公達を圧倒する、実は彼女は・・・とかも期待していた。こんな脱線した期待、かなえられる訳はないけど。

後編も見てしまうと思いますが、それが熱血の主人公達による、手に汗握る異次元バトル・・・の様な退屈な展開にならない事を祈るばかりです。

(評価:★4)

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