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[コメント] クーリンチェ少年殺人事件(1991/台湾)

これは実際に台湾で起きた悲劇を元にヤン監督が映画化したアジア映画史に残る傑作。繊細で純粋で痛々しく残酷な子供たちの世界を逃げずにきっちり捉えた監督の洞察力に感銘を覚えた。
TOBBY

確かに長い気はします。けれど監督がこれだけの時間をかけなければ作品を作れなかったという信念が沸々と画面から伝わって来ます。物語は実際に起きた少年事件を元に、その結末に至るまでを丁寧な視点で追い続けていて、家族、友人関係、時代背景、当時の文化、貧富の差、階級、などを鮮やかに織り交ぜ描きます。何より好感がもてるのは子供の世界を大人の視点で描かず少年たちの視点できちんと捉えている点。だから観客はチャン・チェンの目を通し大人の欺瞞だらけの世界を覗き、思春期の子供たちの純粋さ、未成熟さ、理由無き反抗心を垣間見ることが出来ます。止まらない暴走を一緒に追っていて時にやるせなく辛くもなるのですがヤン監督はきちんとセンチメンタルに逃げずに描ききった所にこの作品のすべてが集約しています。もちろんアートワークのバランスも見事で、夏の匂いたつような風景や建物のシルエットや陽射しなど映像美も見事。日本人だけど家族の像に共通の懐かしさも胸を打つ。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)pinkmoon[*] けにろん[*]

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