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[コメント] スター・トレック(2009/米)

夏にScience Fictionは、よく似合う。そしてSFと云えば、宇宙、タイムパラドックス、無限のループ、ドッペルゲンガー。SFにはヒューマンなリリシズムとノスタルジックさも相性が良く、本作には、すべて揃っている。
TOBBY

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







『タームネーター4」で、すっかりスクリーンで観るSFの面白さを再認識。最終日と知り、慌てて前評判の高い本作を観賞して来た。

なんだか蒸し暑い初夏の午後に、スクリーンで繰り広げられるSFらしいSF的な内容に一気に感覚的に包み込まれて酔いしれてしまいました。

トレッキーではないもののTVでは「ネクストジェネレーション」と「ディープスペースナイン」のシリーズを深夜に、たまに観てはいたけれど、さすがにオリジナルの頃は生まれておらず。小学生の時に休日の昼間に再放送とかでチラッと観ていた記憶程度。「随分、気を使って人種を配分しているなぁ」という感想と「宇宙がテーマなのに宇宙船内のワンセットで表現しちゃうのはアイディアだけど、お茶の間コントと変わらんじゃん」と思った印象が…。あとはスポックの強烈な存在感。

で、今回は冒頭のドラマチックな幕開けで、いきなり観客の涙腺を弱らせておいて、アイオワにジャンプ!のスピーディーで大胆な構成から素直にワクワク。主人公のクリス・パインは、ジェイソン・パトリックにしか見えず(アメリカ人ってこの手のマーロン・ブランドの系列のタイプ好きだよぬ)新鮮味は微妙。ストーリー的に父の才能を背負った天才肌と云う「ハリー・ポッター」とか多くの主人公の類型に見られる、ありがちな設定だが、短気で暴走するのと、周囲も破天荒な彼には冷たいので、なんだかんだで観客にはそっぽ向かれずにシンパシーは得られそう。ただ演技力はカークと言う伝説的キャラクターに支えられての存在感はあれど、本人自体には、あまり個性が感じられず。

一方、若きスポック演じるザッカリー・クイントは秀才だけど虚栄心の固まりで、自分に素直になれないと言う役柄を好演はしている。まぁ、しかし天性の天才肌(カーク)と苦悩する秀才(スポック)だと後者の方が演じ易いのでパインに較べて役得なだけとも云える(あのメイクにも救われている)。ただシリーズ化するであろう本作品でメインを演じる若い役者二人のお披露目としては共に及第点。ギクシャクしていた(スポックが一方的になんだけどぬ)関係も、終盤で二人が友情を育み並んで居る様子には、一種の感銘すら憶えてしまった。

けれど、やはり本作での最高のアクターはレナード・ニモイ。特にオリジナルに思い入れも無いのに、出て来ただけで、その静謐な佇まいにスタンディング・オベーションしたくなってしまった。ドッペルゲンガーの設定でオリジナルキャストを使うのは、やっぱり見応えがある。そして若く青いクイントと対照的に、人生の酸いも甘いも知り尽くした経験値をナチュラルに醸し、ただの秀才から、宇宙のカリスマに変貌している様を見事に演じ切って居た。

ヒロイン演じるウーフラゾーイ・サルダナは華やかさと、知性以外は、あまり見せ場も無く、後半は活躍しておらず残念。ビヨンセあたりを起用して、実は唄とダンスの才能があった!とかいう新解釈を加えエンタープライズで夜ごとにショーでも開く遊び心が欲しかった(謎)。 意外なダークホースは、おかしなロシア人少年チェコフを演じたアントン・イェルチン。『ターミネーター4」のカイルと同一人物と全く気付かず。オタク特有のワンテンポずれてる様子など自然に演じている!。難しい動くカークたちを転送させるのに「それが出来るのは僕しかいない〜」と奇妙なテンポで叫びながら艦内を必死に走るシーンには爆笑したし、サポーティングながら演技力の底力を見せつけられた。

ジョン・チョウサイモン・ペッグブルース・グリーンウッドカール・アーバンら、カークとスポックをがっちりサポートする仲間達もそれぞれに見せ場があり、オリジナルファンも納得してると思われるが、オリジナルと最も顔立ちが似てるのはマッコイを演じたアーバン。暇な人はオリジナルのマッコイとオフィシャルサイトで見比べてみてね。三白眼気味の切れ長の目や顔の皮膚の感じとか、なかなか似てます。

作品、総合評価としては、観ている間は素直にワクワク出来、軽く宇宙にトリップ出来たものの、振り返ると、あまりに詰め込み過ぎてスピーディーに展開し過ぎ、もうちょっと立ち止まってじっくり描いても良い場面もあったような…。敵役のネロ(エリック・バナ)にしても描写があまりにも薄いし、スポックの母を演じたウィノナ・ライダーのあまりにも、ひどい扱いに憤慨。彼女には敵にさらわれたけれど、敵地から何かを盗ませて(!)貢献する様なエピソードを演じさせるべき。まぁ、スクリプトがタイムパラドックスやら色々錯綜させて一応、辻褄が合わせられていたのは観ていて嬉しくなれました。個人的には、例の赤色爆弾の抽出シーンで「あぁ!イクラの食品サンプル出来そう!」と思ってしまい緊張感そげたのが残念。

(評価:★4)

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