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[コメント] ナルニア国物語 第1章:ライオンと魔女(2005/米)

冬の持つ幻想性と、雪の白さの持つ魅力が創造性をより膨らませる原作。それを上手に本作は映像化しているのだが、戦闘シーン等の残虐性や、白の魔女の仲間達のホラー色の濃い造形が原作の持つ世界観を歪める。
TOBBY

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







CGの進歩により到来した空前のファンタジーブームに乗り、待望の映像化。原作は創造性を子供に委ねる割にはシンプルなので2時間弱の映像にどう解釈をあたえたのかが心配であったのだ、その辺りは戦闘シーンを後半のメインに据える事で時間を稼いだ模様。

この辺りは「ハリーポッター」や「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズにも共通なのだが、アクションやバトルシーンを後半の目玉に入れて、子供達の心を掴もうとする解釈から、そろそろ脚本やストーリーでファンタジーの世界を複雑に面白く築き上げると言う方向に制作サイドの視点を変えて欲しいものである。

さもないと今後も量産されるであろうファンタジー作品群(「ライラの冒険」なども同様)の起承転結が、すべて同じような流れになってしまい結局は喰い合って早々にブームは過ぎ去るであろう事が予想される。

本作の健闘は冒頭でも前述した「冬」、「雪」の持つ幻想性と恐怖を原作のニュアンスを崩さずに描き切れていた点。子役達はハリウッドナイズされておらず観客達に親近感を抱かせたものの、白の魔女を演じたスィントンは、中世的で女王の持つ美しさにやや乏しい。映画黄金期のジョーン・フォンティン、全盛期のメリル・ストリープの様な彫刻的な美貌のイメージを原作から想像していたので、無表情で大きなスィントンに魅力は感じられなかった。今ならジョディ・フォスター辺りが一番しっくり氷のような冷たさと美貌を演じてくれた様に思う。

アスランに関しては、せっかく映画は映像で楽しむチャンスなのに、ただのライオンに造形してしまったスタッフの解釈の柔軟性の無さに呆れる。白の魔女の硬そうなコスチューム同様に、どうもファンタジー作品なのに美術スタッフの柔軟性に欠くセンスが作品を凡庸にしてしまった感がある。

しかし、なんだかんだ言って対象年齢のローティーン辺り迄、自分を引き下げてみると素直にワクワクときめく要素は散りばめられていたし、大人であっても現実逃避の扉を開いてはくれるので平均点の3点。

それにしてもアンデルセンに「雪の女王」のパクリだと訴えられても文句は言えまい…。

(評価:★3)

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