考えさせられる映画だ。

前半のテンポの良さからすると後半の失速感は痛い。 軽い映画なのか、メッセージ性の強い作品にしたいのか、 どっちつかずだったのが最大の敗因だと思う。

実は私は在日で。 父が在日の朝鮮籍で、でも日本学校卒なので、 言葉や文化を知らない。 母は日本人。 そして私も日本学校卒なので、言葉や文化を知らず、 まぁ、籍以外は日本人として育ってきたわけなのだけれど。

例えば、住民票がないこととか、 「選挙行かないの？だめだね、最近の若い子は」とか言われても、 「その前に選挙権ないんよね」とは、 わざわざ言うことでもないし、でもちょっとやさぐれな気持ちを抱いたり。 それから、クレジットカードや銀行のキャッシュカード、保険証なんかは、 日本名なのに、免許なんかは韓国名になってしまうから、 ビデオのレンタル証を新しく作るのにもちょっと躊躇したり。 引越しの時なんて、籍だけの理由で審査落ちたこともあったな。

だから、日本人のつもりでいても、 ふとしたときに、思い出さざるを得ないわけで。

幸い私は、いままで交際した人たちが、 そういったことを言える相手で、言ったからって問題もなかった。 でも、やっぱり、恐かったのは確か。

本作の場合、彼が韓国籍なんだけども、 男の子だから、ああいうふうになっても、まだぎりぎりのとこで、 耐えれたかもしれないけど、 彼女が韓国籍というパターンだったら間違いなく男性不信になると思う。

特に最近、朝鮮問題なんかがテレビでやたらと放送してたりすると、 いままでは、韓国籍なんだよね、って何かの時にさらっと言えたのが、 「元朝鮮籍」ってのがあるせいか、ちょっと言いにくくなったのも確か。

それから、どなたか、韓国籍にこだわらずに日本籍にすればいい、 とか簡単に書いていたけど、 できるものならしたいけれども、 それは実はすごく大変なことで。

国に対して履歴書、人生の経歴書などを書かなくてはいけない。 それには賞罰も書くのだけれど、 交通違反なども、犯罪として明記しなきゃいけないし、 ひとつでも犯罪があるだけで、審査は通りにくかったりする。 それに、なにをどうしていいかわからないのも現実問題で。 だから弁護士に頼もうとした。 そしたら最大でも、まぁ20万円もあれば出来るだろう、 ただし、本人じゃないとできないことが多いから、 自分でもかなり動かないとならないらしい。

まぁ、普段は気にしないような問題なんだけど、 就職・引越し・結婚・・・など、 人生の転機には必ずそれが足枷になるのも事実で。

だからこそ、すごくすごく考えさせられたのも、また事実。

本作の全てを肯定することはできないけれど、 そういった諸事情を全然知らない人でも、 少なからず、国籍事情を理解してもらえたし、 理解してもらえなかったとしても、 少なからず、意識の中に生まれたことは確かな功績だと思う。

でもやっぱ、「血が汚い」は痛かったなぁ。

これを読んだ人の殆どは、 今時そんなこと思う人いない、とか、自分はそうは思わない、 って言うかもしれない。 けれど、心のどこかで、「違う」と意識してしまう人が、 少なくないのも事実なんじゃないかと。

だって、エッチ直前に言われるならまだしも、 婚約して、挨拶も済ませたあとに言われたら、 両親になんて説明しよう、とか、少なからずは考えるだろうし。 その場合、どんなに強い愛があっても、 両親などのしがらみで、破談になったり、 祝福されない結婚になったりする場合は意外と少なくないだろうと思うから。