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[コメント] シン・エヴァンゲリオン劇場版(2021/日)

ボクの魂を成仏させてくれなかったエバーへ。
たかやまひろふみ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







見終わっての感想は、大満足でした!ありがとう!全てのエバーにさようなら!という気持ちには程遠く。むしろ田村vs桜庭戦を見た時の心境に近いと言いましょうか。長年待ってこんな試合か……という虚脱感の方が大きいです。

幾つかガッカリしたところはあるのですが。最大は登場人物がベビーターン、善人化していくことで前作『Q』が人間関係ギスギスを含め、恣意的に印象操作をしていただけと思えてしまうことです。

代表例として、今回ミサトさんが「ずっとシンジ君に負荷をかけていた、試合をやらせた責任は私にあります」みたいなことを言い出します。このシーン、声優さんは大変な熱演されており、一瞬ほだされそうになるのですが。いやーでも貴方、『Q』でシンジ君に「もう何もしないで」と言うた時、メチャメチャ蔑むような眼をしてましたよねと。とてもそんな自責を抱えている感じではありませんでしたよねと。

アスカがキレて殴りかかってきた理由が判明する下りもポカーンです。わたくしはてっきり、夏エヴァにて病身の彼女を出汁にオナニーしたことを糾弾されるのかと思っていたのですが。実際には『』でのアスカの危機にシンジ君が能動的にアクションしなかったから、みたいことを言うてくるのです。あん時のシンジ君は親父の横暴に怒って「そんなの関係ねぇって、NERVぶっつぶしてやるって!」と小島よしおばりのポーズで食って掛かってましたよ。それなのにアスカにキレられるのは無理筋じゃーありませんかと。

結局、ミサトさんにしろアスカにしろ『Q』では不自然にシンジ君に冷たく攻撃的で、その理由は物語の内側にはなく、作り手が観客にショックを与えることを優先しただけなんですね……。いやそういうミスリードをして、後で覆すのであれば、相応の説得力ある仕掛けを用意しておいて欲しかったと思うのです。例えば『トップをねらえ2!』のように。仕掛けもなしに、こんな八百長的に問題解決されても、とても寿ぐ気分にならなんだです。

我ながらどうかしているのですが、今回の新劇場版を体験したことで、暗鬱な思い出しかなかった夏エヴァの評価が上がってしまいました。「大人のキスよ」とか言い出すミサトさんの邪悪ぶり、アスカの「コロチテヤル」連呼シーンのブサイクさ、最後まで能動的にはエバーに乗らないシンジ君のやらない夫貫徹ぶり。どれもこれも気持ち悪く、全く嬉しくはないけれど、少なくともあのギスギスはポカポカへ転調するための偽装ではなく、本気でした。観客をタダでは帰さない、画面の向こうから殺しにくる、送り手の悪意というまごころがありました。今こそ4DX上映とかして欲しいものです。

ブツクサと書いてきましたが、結局これ未練です。タラタラです。映画終盤にて、シンジ君が「ぼくも昔アスカのことが好きだったよ」と語り、二人は別々の道を行くのだという展開がありました。これあれですよね、失恋清算モノ。『(500)日のサマー』とか、過去の手痛い失敗から自分は成長したのだ、思い出に拘泥することなく次に進むのだ、というやつ。わたくしも今回の映画を見て、エバーに対する執着を卒業したかった。でも、そうはならなかった、ならなかったんだよ……。

きっとこの未練を抱えたまま、やれ『シン・ウルトラマン』だ、やれ新作だとなれば、また公開されるやいそいそと駆け付けてしまうのでしょう。どうしようもない。んあー。

以下は余談、映画見た後に友人たちと話したSkypeトークより抜粋。

- 『Q』以降は世界が崩壊した設定なので、ランドマークがほとんどん存在しない。空飛ぶゆうれい船やエバー自体は大立ち回りを演じるのだけど、比較となる対象物がないので巨大感に乏しい。パンフ等読むと、特に今回はコンテでレイアウトをきっちり決めることよりライブ感を優先したという旨の説明があるけれど、それがアニメーションとしての快楽に繋がっているかと言うと、あんまり。

- 幾つかの場面では『進撃の巨人』を思い出したり。いや当然順番逆で、先にエバーがあってからの『進撃の巨人』なのだけれど。でも諌山先生はきちんと嘘の話に実存が宿るように描いてきた。嘘でも嘘なりに理屈がある。巨人の力は脊髄液を摂取することで継承するとか。もう今更言うても詮無いのだけど、エバーがエバーを食べることで能力をコピーするとか、どういう仕組みなんですか……。その場の勢いで話を進める、理屈は付いてこない感じ、エバーは車田正美の漫画に近いと思う。真のチルドレンに電源など不要です!というやつ。

- 宇多田ヒカルさんの主題歌が、新劇場版シリーズ通して映画に下駄を履かせている。高級感を付与していると言っていい。以前公開された桜流しのPVも、あれだけ見るとまるで『Q』が寂寥感に満ちた傑作みたいに思えてくる。実際は「槍でやり直そう!」とか言い出す駄洒落映画だったのに。本来は新劇場版も魂のルフランが主題歌ぐらいで丁度よい。今回も最後に「わたしにかえりなさいー」とか流すべきだった。

(評価:★3)

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