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[コメント] 猫が行方不明(1996/仏)

主人公がかなり自己中でお子様で他者への思いやりや想像力や主体性や積極性に欠けてる。けれど、だからこそ「この年頃はこんなもんだよ」と言われれば「うん、そうだね」と言うしかないような、優等生でも不良でもない非映画的な平凡さにあふれた彼女を愛おしく「実感」できる。
tredair

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ラストの、嬉しくなって走っていく(音楽がポーティスヘッドというのがまた洒落てる)彼女の姿にいたく感動したのは、彼女のそのリアリティゆえだったのだと思う。些細な成長ぶりが伝わってくるたびに「そうだよ、そうだったんだよ!なんで気付かなかったんだろう?」と自分のことのように嬉しくなる。

でもこれは、彼女の小さな成長についての話と言うよりは、彼女の視点からとらえたパリとそこに暮らす人々の日常スケッチのようなものなのだろうなとも思う。

解体されるビルや建設予定地、さりげなく語られる当時の政治状況、悪意のない差別感情、近所との親交や軋轢の様子、その人にだけ確立された多様な価値観、それぞれのコミュニティとそこでのみ通じる常識、様々な立場にある人々(有閑マダムからホームレスまで)など。

自己主張が希薄な彼女の視点ゆえに切りとることのできた、(あえて前向きに、ではない)清濁まるごと感が秀逸だと思った。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)けにろん[*] moot kawa[*] ニュー人生ゲーム

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