それにしても、いやーな感じで頭から血の気がひいてくラストだった。その瞬間は最悪。私は＜本当に＞娘が戻ってきたと思っていたので、たいへんなショックであった。夫が帰宅するなり（玄関を開けるやいなや）「いま見た映画について」の話を半泣き状態で訴えてしまったほどだ。

でも、中盤の岬で別れを告げる場面は本当に切なくて泣いたし、（あの強引で自信満々な先輩にムカついてたので）宇宙人ネタにも爆笑した。

また、確かに「娘を失ったかなしみ」についてがほとんど描かれていないような気もして最初はイライラしていたが、モナミとなったナオコが「やっぱり私が死ねばよかったんだ。」と感情的になる場面で「もういいよ、いいから。」と彼女を抱きしめたくもなった。その瞬間、彼女も実はとても悩んでいて、けれども運命を受け入れようとせいいっぱい努力してただけなのかもな、という気がしてきたからだ。

夫が教師のタエコに気があることに気付き「彼女をススメテ」見る場面や、実父から「夫への再婚話があることを知らされる」場面などもあったので、そういうことを考えると＜あえて妻ではなく娘になることにした＞ナオコの選択もわからないでもない。そういう愛の形もあるんだろうな、ということで理解しようと思えばできるような気もする。

結婚相手に（いわゆる）加害者の息子を選ぶあたりも意味深だ。自分が実はナオコであるということを常に意識せざる得ないような男とずっと付き合っていこうだなんて、かなり自虐的といえば自虐的だからだ。彼女はこの先、ずっとその事実を（意識して）背負っていく腹づもりなんだろうな、という悲壮な決意をみてとることもできる。

が、しかし。だったら一生ナイショにしとけよ。それじゃー意味ないじゃん！という怒りもやっぱり消えないんだな。原作を知らないからゆえの怒りかもしれないけれど、どうしてもそこが受け入れられない。その瞬間、よく解釈しようと思っていたこともすべてひねくれた考え方へと流れていってしまい、何もかもが怖くなってくる。

ともあれ、どうせならもっとダメなヒロイン像を！ たとえば、もともと親子関係がうまくいってなくて、娘は学校でも浮きまくり。

そんな少女に母親が憑依し（最初からそれほど愛情を持っていなかったので若さにはしゃいだとしても違和感ナシ）、やがて彼女として生きていくうち、その娘がどれほどつらい日常を送っていたか（もちろん、デキもよくないし特に可愛くもないし友だちもほとんどいない）を知る。

で、ちょっとずつ彼女を理解してゆく母親は、やがて娘を失った哀しみを＜心から＞実感するようになり…。

みたいなダメダメママとダメダメガールが主役の親子再生話の方がよかったな。そんなんじゃ広末涼子主演にはならなかっただろうけど。

でも、そういう＜かなり内向的なダメ少女役＞を演じる彼女も見てみたいような気がする。実はイイコだというのがすぐにわかっちゃうようなストレートなキャラではなく。ましてや一目おかれる孤独な不良少女でもなく。

彼女なら、きっとできる。ちょっと気弱でウブなとこもある耳年増系の眼鏡っ子（図書委員だよね、やっぱり）なども、ぜひ一度やってもらいたい。