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[コメント] 男はつらいよ 寅次郎夢枕(1972/日)

信州の旅路で江戸川の土手で、そして亀戸天神で。やたらと泣かされるのに随所に笑いどころもあり絶妙。この映画におけるチー坊は、まるでボウリング場でタップを踊るリッチのようだ。その役を完璧に素で演じきる八千草薫の愛おしさときたら!
tredair

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







寅がチー坊をふらざるえなかったのは、(これまでの回にもあったように)だめ男としての自覚に起因する「逃げ」や「相手へのいたわり」もあったのだろうけれど、今回は、初の役割となる「恋の橋渡しを請け負った者」としての義侠心のようなものも大きかったのではないか、と考える。

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私的名台詞メモ:聞き取りに自信のない箇所には(?)と記。

■寅の縁談をどうすればよいかみんなで話しあっているところへ来て。

寅「…そんなにオレの嫁さん引っかけるのがおもしろいのか、タコ! てめぇは手足が多いからな、かすみ網でも投網でもうって朝っぱらから町かけずり回ったらどうだ」

サクラ「お兄ちゃんやめて…」

寅「うるせぇ!てめぇらだってそうだい。なんでぇ恩着せがましいこと言いやがって。人の一生にいっぺんの大切なことをよ、てめぇたちの娯楽にしてケタケタ楽しんでいやがる。」

サクラ「お兄ちゃん、そんな言い方ってないでしょ…」

寅「うるせぇ!」

タコ社長「ほ、ホントだよ、そりゃ、しどいよ!」

寅「なんでぇタコ、てめぇが文句言う席(?)があんのかこのヤロー黙ってろいっ。」

おいちゃん「寅、お前もういいかげんにしろって…」

寅「うるせぇ」

ヒロシ「兄さん、社長は今日税務署に行く用を放っぽりだして一日中走り回ってたんですよ!」

寅「なんでぇ偉そうに。税務署がどうした。朝っぱらからガタガタガタガタ働いてやがってこのヤロー、税金を納めんのは国民の義務でしょう、ええ? 催促されねぇうちにとっとと払えこの馬鹿」

おばちゃん「あんたよくそんなことが言えるねぇ!」

ヒロシ「払ったこともない人がそんなこと言っちゃいけませんよ」

寅「てめぇ従業員だからこのヤロー肩持つのか?」

タコ社長「口惜しかったらな、いっぺんぐらい払ってみろ!」

寅「なにぃこのヤロー、向こうからいっぺんでもオレんとこへくださいって来たか!」

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■恋について語りあう

寅「オレぁハナからピーン!と来てたんだい。これは一目惚れだよ。一度会ったらもう忘れることができない。寝ては夢、さめてはうつつ幻の。今の先生はそれよ。オレはそっちの方の勘はするどいんだよ。難しい顔して英語の本なんか読んでるけどもさ、頭ん中には何も入っちゃいないからね。いま目先にチー坊の顔だけがちらついてるんだ。オレにはちゃーんと読めてるのよ。」

サクラ「いくらなんでもそんなこと。」

寅「なんだよ、違うっていうのかお前。」

おいちゃん「そうだよ、お前。あの先生の頭ん中には難しい学問がいっぱいつまってるんだよ。色恋なんかするものか、お前じゃあるまいし。」

寅「妙なこと言うねぇ。それじゃ何かい? オレみたいな下等な人間だから恋をして、先生みたいな上等な人間は恋をしないとおいちゃんはこう言うのか。」

おいちゃん「ああ、そうだよ。」

寅「じゃー、恋は下等な人間のするものか?」

おいちゃん「決まってら。」

ヒロシ「それは違うなぁ、おじさん。人間は誰だって恋をしますよ。」

寅「そうそうそう。その通りだよその通りだよ。」

ヒロシ「恋愛というのは、人間の美しい感情ですからねぇ。」

寅「そうだよ、なっ。お前は経験者だからよくわかってるんだよ。え、ヒロシ、お前がサクラのこと恋したときは、寝ても覚めてもサクラのことしか頭になかったろ。何見たって全部サクラに見えちゃったろ。え?」

ヒロシ「あー、それほどでも。」

寅「なんだお前、そうじゃねぇのか。」

ヒロシ「だって、メシも食わなきゃいかんし仕事だってしなきゃいけないし…」

寅「ほぉ、そうかい。お前そんなキモでサクラに恋をしていたのか。いいかい、恋なんてそんな生やさしいもんじゃないぞ。メシを食う時も、ウンコをする時も、もうその人のことで頭がいっぱいよ。なんだかこう、胸の中がやわらかぁくなるような気持ちでさ。 ちょっとした音でも、たとえば、千里先で針がポトッと落ちても、わああああ!っとなるような、 そんな優しい気持ちになって、いい、この人のためだったら何でもしてやろうと。命なんか惜しくない。ねぇ寅ちゃん、私のために死んでくれる?と言われたら、ありがとうと言ってすぐ死ねる。それが恋というもんじゃないだろうか。どうかね社長」

タコ社長「さー、オレぁ見合い結婚だからね。申し訳ない。」

寅「帰れタコ。」

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■美容院でサクラの髪をなおしながら。

チヨ「そんなことないわよ。とっても助かってるのよ。照れ屋なのよあなたのお兄さんは。小さいときからそうだったわ。人が見てると、いじめたり悪口言ったりするけど、ふたりっきりになるととっても親切よ。サクラちゃんにだってそうでしょ。」

サクラ「うん、まぁ、そう言えばね。」

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