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[コメント] シン・ゴジラ(2016/日)

たとえるならあれだ。近所の子どもと散歩しつつ彼お得意の恐竜話を聞いていた時「○○サウルスはね、あのビルよりも大きいんだよ」と言われて思わず立ちすくんでしまった時のあんな感じだ。その瞬間、いつもの町がとんでもなく恐ろしい光景に見えたんだ。今でもたまに怖くなるんだよ、その恐竜の名は憶えてないのに。
tredair

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







第一形態がぞろりぞろりと画面の向こうから迫ってきた時点で、すでに私は怖かった。とても絵空事とは思えなかった。

あのスピードゆえの圧倒的な重みが、生々しくよどむ濁った熱い空気が、そして意思疎通を夢見ることさえできないあのとんでもない大きさがただただ怖かった。その後もずっと恐怖は続いた。たとえ画面に映ってなくとも、もうその恐怖は消えやしなかった。それどころか成長した姿が見えるたび、それはさらに大きく猛々しくなってしまっていた。一瞬だけ画面いっぱいのアップになったあの黒い瞳の恐ろしさ、無意識の暴力を思わせるかのような理性のない長い尻尾、遠くまで響く耳をつんざくような叫び声、空に向って不気味に照射される幾多の光、炎なのか血なのか判別つかないあのどくどく流れ続けるマグマのようなもの。

逃げまどう人びとのそれぞれのドラマも怖かった。今日はお誕生日だったはずのあの人のドラマが、大切なひとの命日だったはずのあの人のドラマが、まさに陣痛が始まろうとしていたあの人のドラマが、結婚を決めたばかりのふたりのドラマが、再会を祝ったばかりの幼なじみの彼らのドラマが、すべてめちゃくちゃになっていく。人知を超えた得体の知れないものが、瞬時で瓦礫と化したあの小さな部屋が、スーツケースが、地下街が、橋が、階段が、ビルの屋上が、渋滞が、すべてが恐ろしかった。

たくさんのひとびとが命がけでがんばってくれたのはよくわかった。こうして生き残れたのが本当に幸運なことだということもよくわかってる。でも、それでも私はもうこんな東京に住み続けるのはいやだ。もしかしたらまた動き出すかもしれないあんなゴジラとかいう気味の悪いものが直立しているような町でこの先もずっと暮らしていくなんてできない。ずっとそんな気持ちのままスクリーンを見ていた。見ていたような気がする。

(評価:★5)

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