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[コメント] 彼岸花(1958/日)

ただ一通の手紙だけで夫と暮らしてゆくことに賛成してくれた、安易と言えば安易な、けれども私をとても信頼してくれていた父のことを思いだした。どうもありがとう。祝福してくれる人ばかりではなかったからこそ、あの時は本当に嬉しかったよ。
tredair

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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そして、だからこそ気になったのが久我美子。現在進行形で同じ問題を抱える友人の顔が浮かび、なんだかとても切なかった。

最後まで笑顔を見せることのなかった翳りのある彼女。シアワセだと言いつつも、そこまであっさりと割り切れるものではないだろう。時代性を考慮すれば、更につらいことであるのかもしれない。恋人のピアノ弾きも同様だ。見るからに哀しそうな暗い雰囲気での登場だ。そのくせ毎日いっしょに帰るという、彼等のあの仲のよさそうな姿はなんなんだ。その姿が、よけいに胸をキシキシと鳴らすではないか。

ああ、彼等がいつか父親と折り合いが付き、心の底から笑える日が来ますように。

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余談:

山本富士子が佐分利信と最後に会話する場面で、一度だけ彼女の台詞回しが浮くところがある。

唐突に語尾に「ござりまする」と付き、ややおどけた雰囲気になるのだが、その「(うちんなか)めちゃくちゃでござりまするわ」という言葉は、彼女の母親役の浪速千栄子が花菱アチャコと組んだ大人気ラジオドラマ『お父さんはお人好し』から広まった流行り言葉「むちゃくちゃでござりまするがな」を受けたものであるかもしれない。

と、一緒に見ていた70近い母親が申しておりました。そうだとしたら、実にさりげなくて洒落た演出だなぁと。

(評価:★4)

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