駄目押しのような白いチューリップの残像に胸ぐらをつかまれつつ、私も血まみれになって再生したい、と思った。 血まみれになる勇気をだすのが、 思い込みの強さを押さえることこそが実際はひどく難しいことなのだが、とも思いつつ。自分で自分にイイワケしつつ。

本心を堂々と表に出すのはつらい。私はいつも嘘ばかりついている。とりつくろったり演じたりさりげなく話をそらしたりして、明るくその場をおさめようとしてしまう。自分が無傷でいるために善人を装って、そのあげく自らつくりだした虚の自分に疲れ果て、結局は全てどうでもよくなって投げ出して崩壊させ逃げてしまう。

それでも最近、ようやく気付いた。 それでもそばに居続けてくれたひとはある。あった。居続けたいひとはあった。ある。 「おそろいのキーホルダー」は、絵空事ではなくちゃんと存在していた。

今日、初めての胎動を感じた。家族の再生や復元、模倣どころか私にとっては完全な始動だ。血まみれになるというのは、つまりそういうことだったのか？　今となってはわからない。それでも今度こそきちんと愛して愛されよう。と思う。愚かで醜悪な、けれども正直な自分のまま愛して愛されよう。と思う。みっともなくてもいいから、失敗してボロボロになってもいいから、それでもまずは愛そう。と思う。ライフスタイルやひととしての理想論等はその後だ。そんなものはたぶん本質ではない。ひととひとが真剣に対峙するということは、ひとを愛して愛されるということは、家族になる、なっていくということは、つまりきっとそういうことなのだ。十数年も経ってやっとわかった。わかってきた。少しでもわかってよかった。おめでとう、そしてありがとう。

願わくば彼女も前に進みだせますように。 ようやく彼女のことを直視できるようになってきたからこそ、今は心からそう願う。

花は繰り返し開く。種をつける。あきらめるのはまだ早い。 そこには水があるし根をはるための土もある。あった。あとは太陽に気付けばいい。 太陽のない場所なんて、光のない場所なんて、この世に生きている限りきっとないわけがない。ないはずなのだから。