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[コメント] サンライズ(1927/米)

サイレント完成期における最大の成果。解説→
tomcot

(随分前に自分で書いたこの映画の解説です。口調が変ですが、せっかくなので載せておきます。)

戦前ドイツを代表する監督の一人が、F・W・ムルナウが、アメリカのフォックス社に招かれて撮った渡米第一作。音楽と効果音のみのサウンド版無声映画。

これは、まさに映画が映画として現実を物語り始めた瞬間の映画。サイレントでありながらこれほどまでに雄弁な映画を探すためには、やはりムルナウの他の映画をあたることになるだろう。この映画の主演女優であるジャネット・ゲイナーは第一回アカデミー賞の主演女優賞であった。

さらにこの素晴らしく輝かしいセット、ロメールに「ムルナウは『サンライズ』を撮る前に、まるごと一つの世界を構築しておいたのであり、撮られた映画はその記録にすぎない」などとつい書かせてしまうほど、見事に作り上げられたこのセットはどうだろう。しかもその見事なセットへたどり着くまでの移動ショットは、セット以上に感動的だ。この電車のシーンこそ、カメラが自由に動きだしたその瞬間の記録なのである。

誰もがほほうと頷きため息をつくような、この映画の最後のシーン。これがヴィスコンティの映画「イノセント」のラストに引用されている、などということをさらりと指摘できるのは、やはり淀川長治さんただ1人。その淀川さんにとっての最高の贅沢こそ、ムルナウの芸術でありヴィスコンティの芸術であったことは間違いない。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (8 人)けにろん[*] ぽんしゅう[*] 動物園のクマ[*] tredair[*] ジャイアント白田 ジェリー[*] ゑぎ[*] muffler&silencer[消音装置][*]

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