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[コメント] クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦(2002/日)

この映画がGW限定公開。かたや『千と千尋〜』は延々とロングラン。不公平だな。ま、金の掛かり方も桁違いではあるが。世界に発信するべきなのは間違いなくこちら。
ピロちゃんきゅ〜

「所詮アニメ」。そう言われるのは、確かにアニメーション漫画の映画化に伴って出来た言葉だ。しかし、少なくともこの日本においては近年のジブリ作品・特に宮崎作品の(主に興行面での)大成功のお陰で、その内容はともかくも「所詮アニメ」とは一概に言えなくなってきたのは喜ばしいことだ。もっとも、彼が一番、良質な作品を作っていた頃は今より10年以上も昔にさかのぼらねばならないが、かつての努力があったればこそ、今や世界に堂々と発信できるほどの不動の地位を得ているし、ジャパニメーションの最先鋒としての役割もになっている。ま、異論も反論も誤解も異常にあるけど。それは時間と共に淘汰されていく事と思いたい。

さて、かたや「所詮アニメ」の域を出ないように出ないようにと、大事に作られているアニメも存在する。その代表と言えるのが、このクレしんシリーズだ。「所詮アニメ」であるから、当然、その目安は「安くあげる」「早くあげる」「楽しくあげる」「そして、そのファンの為に創る」である。だから手を抜くところは徹底して手を抜いたり、しんちゃんらしいベタなギャグもストーリーに関係なく存分に織り交ぜられるのだ。「所詮アニメなんだから、あんなに背景に時間かけなくてもさ〜」みたいな逆こだわりを見せる背景、人物。そう、子供にはチューリップ1本の花びらのシワなんかどうでもいいのだ。だいいち見えないし(大人もです)。

「徹底したリアルさ」を追及する結果、時間と金ばかり掛かるので、大掛かりな宣伝が必要になるジブリ作品達。あれはあれで、個人的には応援したい方ではあるが、あちらだけを認めて、こちらを見もしないってのは、ちょっといただけない。と言っても、「所詮アニメ」映画は大体が「所詮アニメ」だから見てがっくりするんだけど、このクレしんだけが違う、ということか?

そこで、何が違うのかちょっと考えてみた。結果、自分が思うに、このクレしんの大きなポイントは2つあると推測する。

1つは、あくまでアニメの「クレしん」の域を出ない事。つまり、必ず、しんちゃんを中心にして、野原一家、春日部防衛隊(だっけ)の活躍と、毎度のギャグ・表情・行動を織り成すことによる、ファンへのアピール。そして「クレしん」である事への安心感。これによって、「所詮アニメ」である事を宣言しているわけだ。だから「安く」「早く」完成されていても文句がない。だってアニメだもん。平面でしか躍動しないキャラっていったって、3Dで動くしんちゃんはもはやクレしんではないのだ(と、任天堂のマリオスタッフやゼルダスタッフにも強く言いたいな、これは)。みさえが怒ると、開いた口が顔を飛び出したりもするが、それがクレしんのみさえなんだから許されるのだ。

そして、もう1つ。これこそが重要だと思うんだが、必ず、新キャラが主役になる点。これこそが「所詮アニメ」であって「所詮とは言えない」要因だろう。前作の二人。そして今回の青空侍と廉姫の二人。両作とも、この新キャラの設定と演出が見事であった。この主役であるはずのしんちゃん一家を押しのけて、ストーリーの主役になっているわけだ。おかげで、1作1作ごとの個性が出る。他のアニメ映画も、基本は同じ。いつものメンバー。いつものギャグ。そこへ新キャラによるストーリーの展開。そして、いつものキャラの活躍によるハッピーエンド。基本線は全てがこうだと言ってもよい。しかし、このクレしんは、新キャラをより強く生かし、主役ではないのか?ぐらいの話にする事で、「クレしん」であって「戦国大合戦」にしているのだ。他のアニメとの大いなる違いであろう。思えば、自分が好きだったアニメといえば、『カリオストロ〜』だが、あれも主役はクラリスであって、ルパンはサブ。元来サブの次元・五右衛門がサブサブに回っても、クラリスを魅力的に作る事が出来たから良い話(オレはね)になったのさ。

クレしんというブランド(?)を被ってやるから気楽に出来るし、固定客もやってくる。クレしんである理由がここにある。「所詮アニメ」でやるから生きる映画なのだ。できれば、この気楽に作ってるままの姿で世界へ向けて発信して欲しい。アメリカ人、特に白人中年男性はしんちゃんのベタなギャグに大笑する事間違いなし(注:差別用語ではありません)。しかも子供にも受けるであろう事間違いなし。世界で受けてこそ、「親が見せたくないアニメ」ランキングから外れる唯一の手段だ。宮崎さんの創作者としての意思の衰退した作品(完成作品が悪いというわけではなく、その作品への姿勢を指します)を公開するぐらいなら、こちらをぜひ推したいものである。ホントに。

実は、昨日の夜、この半分ぐらいのレビュー書いたんだけど、誤って消してしまって。書き直したら、こんな長すぎレビュー。すびばぜん。

(評価:★5)

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